18年目を迎える、恒例の正月企画「博物館に初もうで」が東京国立博物館で開催中です。
1月2日(土)~1月11日(月・祝)までは正門、本館玄関、本館大階段において、池坊・蔵重伸氏による正月の生け花が出迎えてくれます。
池坊・蔵重伸氏による正月の正月飾り
特集「ウシにひかれてトーハクまいり」
本館の特別1室・特別2室において2021年1月2日(土)~1月31日(日)まで、干支にちなんだ吉祥作品が展示されています。
今年の干支は「丑(ウシ)」です。ことわざの「牛に引かれて善光寺参り」をもじり、「ウシにひかれてトーハクまいり」は、ふとした出来事からのご縁への想いが込められているそうです。

重要文化財 《阿弥陀如来および両脇侍立像(善光寺式)》鎌倉時代・建長6年(1254)
牛車の車輪は、乾燥による歪みを防止するために川に浸したそうです。 水紋に浮かぶ車輪は、まるで水に浮かぶ花のような美しさです。 貴族生活の美意識の高さを感じる匠の技です。

国宝《片輪車蒔絵螺鈿手箱》平安時代・12世紀
羽織の背中にある歪んだ片輪は、水の流れも一緒にデザインされてこの形になったそうです。 振袖に描かれた雪景色の中の牛車は、高貴な女性の乗り物だったそうです。 墨絵の黒い牛は、大切に育てられた清楚な娘のようです。絵の周囲の表装には片輪車があしらわれています。

(左から)《陣羽織 淡黄羅紗地片輪車模様》江戸時代 / 《振袖 浅葱縮緬地松竹梅鷹御所車模様》江戸時代 / 重要文化財《駿牛図断簡》鎌倉時代・13世紀
毛並みも松葉も、ひと針ひと針美しい刺繍です。牛の力の強さと童子の力では動かせない山のような牛の大きさが伝わってきます。 牛の背に乗る牧童図ののどかな雰囲気からは春の陽ざしの温もりを感じます。

《袱紗 淡紅繻子地騎牛笛吹童子図》江戸時代・18~19世紀 アンリ―夫人寄贈
本館3室には、古今和歌集が展示されています。 全集として揃う最古の書物で、1120年頃に書写されたということは900年も昔!
中国からもたらされたオリエンタルなデザインの紙、そして部分的に読むことができるさらさらと書かれた優美なひらがな、この雅な貴族文化を900年後に目の前で堪能できます。

国宝《古今和歌集(元永本)下帖》平安時代・12世紀 三井高大氏寄贈
本館4室 茶道具 初釜に使われた茶器が展示されています。朱色や金などの素材から、晴れやかな気持ちでお客様をお迎えしていた茶会の様子が伺えます。

本館4室 茶道具
「弱法師」は、四天王寺を描いた作品です。
俊徳丸伝説は、父から家を追放された俊徳丸が悲しみのあまりに失明し、乞食坊主に身をやつして、四天王寺の落日を拝むと極楽浄土へ行けるといういわれを信じて、落日を拝みにいったところで父と出逢い、追放したことを深く後悔していた父により家に連れ帰られる話です。
屏風に収まりきらない程立派な梅の樹が描かれています。下村観山は、この落日を拝む俊徳丸の姿を立派な梅の木の向こう側に描いています。この絵の前に立つと、四天王寺の梅の樹の向こうに我が子を見つけた父の状況が湧いてきました。

重要文化財《弱法師》下村観山 大正4年(1915)
展示期間が1月17日(日)までと短いのですが、本館2室(国宝室)の《松林図屏風》はお正月には向き合いたい国宝です。 濃い霧の中から浮かび上がる松は筆の勢いでかすれ、枝が強風で揺れ動き、強風が耳の横を通る音まで聞こえてくるようでした。

国宝《松林図屏風》長谷川等伯 安土桃山時代・16世紀
この他にも、新春の訪れを祝した吉祥作品が室毎に選定され、歩を進めるうちに晴れやかな気持ちが膨らんでいきました。 これから寒さの本番ですが、新春として日本の美意識を感じることで、ピンと背筋が伸びるような思いがしました。
※入館にはオンラインによる事前予約(日時指定券)が必要となります。
※会期中、予告なく変更が生じる場合があります。
[ 取材・撮影・文:法乙 / 2020年1月2日 ]
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