『君の名は。』の大ヒットで、一躍時の人になった新海誠監督。展覧会ではデビューからの6作品をひとつずつ紹介し、独特の世界観をつくってきた新海監督の歩みを振り返ります。
会場最初は、2002年のデビュー作『ほしのこえ』。会社勤めをしながらアニメーションを自主制作していた新海監督。会社を辞めてつくった『ほしのこえ』も、監督・脚本・絵コンテ・作画・美術など、制作のほとんどを新海監督がひとりで行いました。会場には当時の制作環境として、会社員時代に買い揃えた「Power Mac G4」も紹介されています。
SF的な世界観を持つ25分の作品。この時から、風景やアイテムなどは後の新海作品に通じる要素も見受けられます。
VIDEO 1章「ほしのこえ」 続く2004年の『雲のむこう、約束の場所』は、初の長編作品。集団での制作がはじまり、この作品で生まれた美術チームはその後の新海作品には欠かせない存在となりました。
2007年の『秒速5センチメートル』は、それまでのSF的な要素は陰を潜め、現実に起こりえる出来事だけを描いた作品。単館上映ながら異例のロングランとなり、今なお熱狂的な支持を集めています。
2011年の『星を追う子ども』は、「日本の伝統的なアニメ制作の方法で完成させる」ことを目指した作品。親しみやすい絵柄は、それまでの新海作品とはやや趣が異なります。
2013年の『言の葉の庭』は、男子高校生と年上の女性の恋模様を描いた作品。ターゲットを明確にするために企画書をつくり、「観客が求めているもの」と「自分が表現したいもの」がぴったり重なりました。
会場では、劇場作品以外の仕事も紹介されています。自主制作時代の作品から、企業とのコラボCMなど。「東京とそれ以外の場所で暮らす男女が後に出会う」というZ会のCMは、映画『君の名は。』のベースになりました。
VIDEO 2章「雲のむこう、約束の場所」、3章「秒速5センチメートル」、4章「星を追う子ども」、5章「言の葉の庭」 会場最後は、もちろん『君の名は。』。2016年の公開で、249億円を超える大ヒットを記録。日本だけでなく、世界各国でも高く評価されました。
出会うはずがない男女が入れ替わるという不思議な出来事が、美しい映像の中で進むストーリー。本展会場の国立新美術館も、映画の舞台になっています。日本のアニメーション界を代表するスタッフの参画に加え、制作初期からロックバンドのRADWIMPSが関わり、より魅力が深まりました。
会場最後には『君の名は。』制作時のPC環境(再現)も。やはりMACですが、『ほしのこえ』制作時とはだいぶ変わりました。
VIDEO 6章「君の名は。」 会場を通してみると、新海監督が作品をつくるたびに新たな課題を見つけて、次の作品へ反映していく事を繰り返している事が良くわかります。次の作品は「現代を舞台にしたいですし、東京を舞台にしたい」「たぶん、たくさん空を描くことになる作品になるんじゃないかな」との事。期待したいと思います。
展覧会は全国巡回で、東京展は3館目。この後は札幌芸術の森美術館に巡回します(2018年1月3日~2月25日)。
© 2016「 君の名は。」製作委員会
© Makoto Shinkai / CoMix Wave Films
© Makoto Shinkai/ CMMMY
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年11月10日、メディア向け内覧会にて ] ■新海誠展 に関するツイート