国や州からの財政的援助を受けず、個人コレクターやスポンサーからの支援でコレクションを拡充してきたボストン美術館。本展ではコレクターやスポンサーの活動にも光を当てながら、ジャンル別で作品を紹介していきます。
まずは古代エジプト美術から。ボストン美術館の古代エジプト美術コレクションは、収集家から寄贈により、開館時(1876年)にはすでに重要な位置にありました。20世紀に入ってからハーバード大学と共同で発掘調査を進め、現在では4万点超という充実のコレクションを誇ります。
「古代エジプト美術」続いて「中国美術」と「日本美術」。展覧会のチラシはゴッホ推しですが、この東洋美術は見逃せません。
中国美術では、北宋の第8代皇帝・徽宗による花鳥画、南宋の馬夏(馬遠と夏珪)による山水画も逸品ですが、目を見張るのは陳容《九龍図巻》。雲間に見え隠れする9匹の龍は、水墨画のさまざまな技法を用いてダイナミックに描かれています。
日本美術では英一蝶の《涅槃図》に注目。画面だけでも約2.9m×約1.7mという巨大仏画で、約170年ぶりの本格的な解体修理を経て、初の里帰りを果たしました。釈迦の回りで皆が悲しんでいますが、悶絶する動物たちはユーモラスにも思えます。
「中国美術」「日本美術」19世紀後半にヨーロッパに出かけるようになったボストニアン(ボストンゆかりの人々)。当地で生まれた新しい美術にいち早く目をつけ、印象派とポスト印象派の作品が次々に収集されました。
展覧会の目玉が、ファン・ゴッホによるルーラン夫妻の肖像。ファン・ゴッホは、南仏アルルで出会ったルーラン一家の肖像を20点以上制作しています。展示されているのは、夫の肖像はおそらく最初に描かれたもの。逆に妻は、おそらく最後に描かれたものです。
ここではファン・ゴッホ以外もモネ、ルノワール、ドガ、コロー、セザンヌ、ピサロ、ミレーらの作品も展示されています。
「フランス絵画」アメリカ絵画コレクションも、ボストン美術館の目玉のひとつ。北米・中米・南米におけるあらゆる時代の作品を網羅的に収集しています。肖像画で知られるジョン・シンガー・サージェントらの絵画が展示されています。
ボストン美術館の版画・素描・写真のコレクションは、1887年に誕生。15世紀から現代までの版画・素描・水彩画・写真・挿画本・ポスターの作品が収められています。展覧会で紹介されているのははエドワード・ホッパーら4人の版画と写真です。
「アメリカ絵画」「版画・写真」展覧会はこの後「現代美術」と続きますが、こちらは会場でお楽しみください。
ボストン美術館のコレクションによる展覧会は過去に何度も開催されていますが、総合的に紹介する展覧会が日本で開催されるのは約40年ぶり。東京展の後は、神戸市立博物館(10月28日~2018年2月4日)、名古屋ボストン美術館(2月18日~7月1日)に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年7月19日 ]■ボストン美術館の至宝展 に関するツイート