「保存・研究」と「展示」という使命を持つミュージアム。劣化を防ぐためには外に出さないほうが良いですが、それでは一般の方は見られません。また、研究者は近寄って拡大鏡で見る事がもできますが、展示ケースの中の鑑賞には限界もあります。
数々のジレンマに対応するのが、デジタル技術。ますます存在感が増しているミュージアムにおけるデジタルを紹介するのが本展の意図です。
会場は、入る前からデジタルコンテンツ。千葉のご当地キャラクターを見たり、歴史上の人物画像に自分の顔写真を入れたりして楽しむ事ができます。
第1章は「デジタルで楽しむ絵画資料」。ミュージアムではお馴染みといえる、拡大画像を見せるシステムなどが紹介されます。
スマホでも簡単にできる拡大表示ですが、歴博が所有する《江戸図屏風》を人の顔が見える大きさにすると、データ容量はスマホ写真とは桁違い。高速に表示するための仕掛けも組み入れられています。
第2章は「デジタルで解き明かす資料のなぞ」。バラバラになった古文書を切り貼りするのも、デジタルなら簡単。錦絵をデジタルで分析する事によって、天然藍からプルシャンブルー(ベロ藍)に代わった時期も特定できます。
第1~2章展示は第2会場にも続きます。
第3章「デジタルで楽しむ工芸資料」は、立体物をデジタル技術で楽しむ手法について。入口で踊っていた歴博3Dキャラクター「もみちゃん」が来ている小袖も、館の資料から採集したものです。
昨年開催された
「万年筆の生活誌」展で披露された蒔絵万年筆のデジタルコンテンツも、ペン型のデバイスで楽しむ事ができます。
第4章は「デジタルで広がる歴史展示の可能性」。小諸城のCG復元プロジェクトでは、残された絵図録をもとに失われた古城を3DCGで再現。ヘッドマウントディスプレイを用いて、実際に城の中を歩くように鑑賞できます。
コーナー最後にはデジタル技術を用いたすごろくも。サイコロにセンサーを入れて出た目を解析し、自動でマスを進みます。
第3~4章展示においても研究においても、ミュージアムとデジタルは、もはや不可分。あまりも当たり前になったので、逆にデジタル技術が無かった時のミュージアムに思いを馳せると、デジタルの利便性がイメージしやすいと思います。
なお、展覧会の本意はデジタル技術ですが、「このお宝をデジタルで見せるとこうなります」という流れの紹介も多いので、実物展示もかなりの名品が出展中(会期中に入れ替えがあります)。デジタルと本物の両方をお楽しみいただけます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年3月13日 ]■デジタルで楽しむ歴史資料 に関するツイート