夏休みの企画展としては、定番のひとつといえる妖怪展。江戸博での本展は、時代をさかのぼる形で、大きく4章構成で妖怪像の変化が紹介されます。
会場入り口ではたくさんの妖怪がお出迎え。妖怪のバリエーションが多彩になったのは江戸時代で、多くの百鬼夜行絵巻が描かれました。妖怪の婚礼を描いた絵巻は、ユーモラスです。
《百鬼夜行絵巻》大屋書房蔵、岡義訓《化物婚礼絵巻》松井文庫蔵本展きってのユーモラスな妖怪はこちらの2作品でしょう。
《姫国山海録》(きこくせんがいろく)は、日本各地に出現したとされる不思議な生物を記したもの。子どもが描いたような脱力系の妖怪が描かれています。
《針聞書》(はりききがき)は、基本的には鍼灸師のための口伝集。様々な病気の原因が虫として紹介されていますが、その姿は荒唐無稽。こんなものが身体の中にいるわけがないのですが、体内で起きる不可思議の原因を妖怪に求めていたのです。
「姫国山海録」宝暦12年(1762)東北大学附属図書館蔵、茨木元行「針聞書」永禄11年(1568)九州国立博物館蔵(展示期間中頁替あり)もちろん定番の浮世絵や幽霊画も。この時代妖怪は、人気絵師たちにより様々な造形を得て進化していきます。また、おどろおどろしい幽霊画は、百物語の流行で需要が増加したそう。ろうそくの灯りに、ぼんやりと浮かび上がる幽霊画を想像して見ると、背筋がゾクゾクします。
1章 江戸の妖怪、大行進! sectionD:幽霊画の世界、sectionE:錦絵の妖怪初期の百鬼夜行絵巻が、成立したのは室町時代と言われます。この時代は大江山の酒呑童子をはじめとする妖怪退治伝説が絵巻で描かれ、多様な妖怪文化の芽吹きが見られます。
重要文化財《土蜘蛛草紙絵巻》では、仕留めた後に子グモとドクロが出てきたという伝聞に基づいた姿で描かれています。
地獄絵図は本来は仏教絵画ですが、「妖怪絵のルーツは地獄絵」(監修の安村敏信先生)と、本展では取り上げています。六道絵では鬼が地獄で人々を苦しめる図が恐ろしく描かれ、人々に恐れを抱かせます。
国宝《辟邪絵 神虫》(へきじゃえ しんちゅう)。疫鬼を懲らしめる善神を描いていた絵巻なので、正確には妖怪ではなく神ですが、八本の足で鬼を捕らえる姿は、円谷映画の怪獣のよう。かなりの迫力です。
2章 中世にうごめく妖怪 《大江山図屛風》池上本門寺蔵、重要文化財《土蜘蛛草紙絵巻》東京国立博物館蔵、国宝《辟邪絵 神虫》奈良国立博物館蔵さらに昔、縄文時代後期(紀元前2000-1000年)の重要文化財《みみずく土偶》も、人間とはかけ離れた姿から、現世には存在しないものへの恐れを表した、妖怪のルーツとも考えることができます。
そして、4000年の時空を土偶とともに超えれば、現代の妖怪が登場です。子供たちに大人気の妖怪ウォッチ。ジバニャンをはじめとした個性的な妖怪たちは、子ども達に大人気です。
身の回りにいる妖怪を、妖怪ウォッチで探して図鑑にしていく、というのは江戸時代の妖怪絵巻などに通じるものがあります。
土偶の影に誘われて4000年をジャンプ!初公開となる、妖怪ウォッチ人気キャラクターのキャラ原案が展示されています。展覧会の最大の特徴が、日本美術の名品群。価値が高い資料も数多く揃えた構成は、従来の妖怪展とはかなり趣が違います。
展覧会は前後期等で展示替えがあり、現存する最古の「百鬼夜行絵巻」として名高い真珠庵本(重要文化財)は8月2日(火)からの後期で展示されます。
出品リストは公式サイトでご確認下さい展覧会は、東京展の後は大阪へ巡回。2016年9月10日(土)~11月6日(日)に
あべのハルカス美術館で開催されます。
[ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2016年7月4日 ]■大妖怪展 土偶から妖怪ウォッチまで に関するツイート