IM
    レポート
    原田直次郎展
    埼玉県立近代美術館 | 埼玉県
    約100年ぶりの大規模展
    留学先で身に付けた本格的な西洋画で、明治期に活躍した原田直次郎(1863~1899)。日本の近代美術に大きな足跡を残しましたが、回顧展は過去に1度しか開催されていません。約100年ぶりとなる大規模展が全国巡回で実現、埼玉県立近代美術館で開幕しました。
    原田直次郎 重要文化財《靴屋の親爺》東京藝術大学
    (左から)原田直次郎《高橋由一像》東京藝術大学 / 高橋由一《江の島図》神奈川県立近代美術館
    (左から)原田直次郎《男性像》 / 原田直次郎《神父》信越放送株式会社
    (左から)原田直次郎《老人像》三重県立美術館 / 原田直次郎《老人》東京藝術大学
    (左から)原田直次郎《島津久光像》尚古集成館 / 原田直次郎《毛利敬親肖像》山口県立山口博物館
    (左から)原田直次郎《雪景》森鷗外記念館(津和野町) / 原田直次郎《風景》東京藝術大学 / 原田直次郎《村の風景》石橋財団石橋美術館
    (左から)原田直次郎《遠近法 第四編》東京国立博物館 / 原田直次郎《遠近法 第三編》東京国立博物館
    (左から)原田直次郎《庭》 / 原田直次郎《風景》
    (左から)原田直次郎《素戔嗚尊八岐大蛇退治画稿》岡山県立美術館 / 原田直次郎《花》岐阜県美術館寄託
    神奈川県立歴史博物館で昨年開催された五姓田義松展、3月23日から始まる黒田清輝展と、相次いで開催されている明治初期の洋画家展。原田直次郎は、年齢的には両者の間です。36歳で死去した事もあって、その実力に比べると知名度はやや低いかもしれません。

    生まれは幕末の江戸。父は渡欧歴がある開明的な人物で、原田も幼い頃からフランス語を学んでいました。西洋文化が身近にあった原田は、やがて西洋画の道へ。20歳になる1883年に高橋由一の画塾・天絵学舎に入門します。

    会場には原田が描いた高橋由一の肖像画も展示されています(ただ、この作品を描いたのは留学を経て帰国した後です)。



    第1章「誕生」

    原田は1884年にドイツ・ミュンヘンに留学。当地の美術アカデミーと、画家のガブリエル・フォン・マックスから本格的に油彩を学んでいきます。

    美術アカデミーでの修行中に描いたと思われる老人の作品は、既にかなり高い完成度。的確な形態の捉え方と優れた明暗表現で、本格的な技術を身に付けていた事が分かります。

    留学研修の結晶といえる作品が、重要文化財《靴屋の親爺》。禿げ上がった額、鋭い眼光。乱れた衣服を気にも留めず、一点を凝視する逞しい職人像は、匂いまで漂ってきそうです。



    第2章「留学」

    日本における西洋画の広まりを期待し、3年半の留学を終えて帰国した原田。ただ、ちょうど時代はフェノロサと岡倉天心が日本美術の復興を唱えていた時代でした。相対的に洋画は軽んじられ、開校した東京美術学校にも西洋画科は設置されませんでした。

    西洋画の普及に向けて奮闘した原田。第3回内国勧業博覧会に出品された《騎龍観音》には批判的な意見も出ましたが、原田を強く援護したのが森鷗外でした。鷗外と原田は留学時代に出会い、生涯にわたり親しく交わっています。



    第3章「奮闘」

    1889年、原田は自邸に画塾「鍾美館」を開校。本格的な洋画を学ぶために集った輩の中には伊藤快彦、和田英作、三宅克己、大下藤次郎ら、後に日本の画壇を牽引する事になる画家も含まれていました。

    ただ、徐々に病魔が原田の身体を蝕み、病の床に伏せるようになります。外出が困難になった原田が縁側で庭を描いた作品は心に響きます。

    絶筆と伝わる作品は《安藤信光像》。伏したまま描いたので顔の下の方が大きくなったと伝わりますが、原田の観察眼の確かさを裏付けているようにも思えます。1899年に死去、まだ36歳の若さでした。



    第4章「継承」

    会場の最後には、子供向けの「原田すごろく」も用意。「靴屋の親爺」に好きなセリフを言ってもらうユニークなパネルもありました。

    《靴屋の親爺》と《騎龍観音》はともに重要文化財のため、会場ごとに実物展示が異なります。埼玉では《靴屋の親爺》の方をじっくりお楽しみください(《騎龍観音》はパネル展示です)。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年2月16日 ]

    ※会期中に一部展示替えがあります

    原田直次郎 西洋画は益々奨励すべし原田直次郎 西洋画は益々奨励すべし

    埼玉県立近代美術館 (監修)

    青幻舎
    ¥ 2,700


    ■原田直次郎展 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2016年2月11日(木)~3月27日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:30
    ※入館は閉館の30分前まで
    休館日
    月曜日(3月21日は開館)
    住所
    埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
    電話 048-824-0111
    公式サイト http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=327
    料金
    一般 1,100円/大高生 880円/中学生以下と障害者手帳をご提示の方(付き添い1名を含む)は無料
    展覧会詳細 原田直次郎展 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    【八尾市立歴史民俗資料館】学芸員募集(歴史担当)/※要学芸員資格 [契約社員/正社員登用制度あり]◆年休120日以上・未経験も歓迎! [八尾市立歴史民俗資料館]
    大阪府
    荻窪三庭園 施設管理運営スタッフ募集! [荻窪三庭園]
    東京都
    国立科学博物館 事務補佐員(短時間勤務有期雇用職員) [独立行政法人国立科学博物館 上野本館]
    東京都
    国立科学博物館 特定有期雇用職員(特定非常勤事務職員) [独立行政法人国立科学博物館 上野本館]
    東京都
    横浜みなと博物館ミュージアムショップ アルバイト募集! [帆船日本丸・横浜みなと博物館]
    神奈川県
    展覧会ランキング
    1
    国立西洋美術館 | 東京都
    モネ 睡蓮のとき
    開催中[あと78日]
    2024年10月5日(土)〜2025年2月11日(火)
    2
    麻布台ヒルズ ギャラリー | 東京都
    ポケモン×工芸展 ― 美とわざの大発見 ―
    開催中[あと69日]
    2024年11月1日(金)〜2025年2月2日(日)
    3
    東京都美術館 | 東京都
    田中一村展 奄美の光 魂の絵画
    もうすぐ終了[あと6日]
    2024年9月19日(木)〜12月1日(日)
    4
    日本科学未来館 | 東京都
    特別展「パリ・ノートルダム大聖堂展 タブレットを手に巡る時空の旅」
    開催中[あと71日]
    2024年11月6日(水)〜2025年2月4日(火)
    5
    国立科学博物館 | 東京都
    特別展「鳥 ~ゲノム解析で解き明かす新しい鳥類の系統~」
    開催中[あと91日]
    2024年11月2日(土)〜2025年2月24日(月)