2001年3月、アフガニスタン・バーミヤンの二体の巨大仏がタリバンによって破壊され、世界に大きな衝撃を与えました。現在、日本政府が資金援助をし、ユネスコ事業として、日本、ドイツ、イタリアが分担してバーミヤン遺跡の修復、保存事業を進めており、アフガニスタンの復興とともに世界の人々の関心をよんでいます。
パキスタンとアフガニスタンの仏教美術は、インドはもとより、ギリシア・ローマ、ペルシアの諸文化が融合し成立したもので、インドからの仏教美術が大きく発展し、その後の中国・韓国・日本の仏教美術の源流ともなりました。
とりわけガンダーラ美術はギリシア・ローマの彫刻技法とインドの仏教とが融合した仏教美術で、仏像が誕生し、釈迦の生涯を表した仏伝浮彫り、菩薩像や守護神などが造られ、その主題はバラエティーに富み、アジアの仏教美術の原点といえます。また、ガンダーラ美術は中央アジアで大きく発展し、アフガニスタンのバーミヤン美術を生み出しました。
日本にはパキスタンについで多くの優れたガンダーラ美術のコレクションがあり、本展ではその中から優品を選りすぐり、未紹介の作品を数多く展示します。
壮大なバーミヤン遺跡と美術のかつての様相を写真パネル、模型、測量図、スケッチ図など用いて、その全貌を展示する予定です。同時に、現在進められているバーミヤン遺跡の修復保存の状況や、壁画のC14年代測定や顔料分析の結果など最新の研究状況を提示します。さらに、中国新疆の大谷探検隊の収集品も展示して、仏教美術が異文化を吸収しながら発展していった様相を写真パネルや図を用いて分りやすく示し、中国や日本の仏教美術とも比較しながら展示します。