現代日本画に大きな足跡を残した山口蓬春(1893-1971)は、初めて油絵画を目指しますが、すぐに日本画に転向し、伝統的な日本画を継承する「新興大和絵会」に参加します。多くの古典から学んだ成果として生まれたのが、帝展特選さらに皇室買い上げとなった≪三熊野の那智の御山≫(1926)です。その後、日本画家と洋画家、美術評論家が共同してグループを結成した「六潮会」に参加し、新しい絵画を生み出そうと模索します。戦中の戦争記録画≪香港島最後の総攻撃図≫(1942)を描き、終戦を迎えた山口蓬春は、さらなる新日本画を追求し、≪山湖≫(1947)、≪浜≫(1950)、≪夏の印象≫(1950)といった傑作を描き出し、日本画団にモダニズムの清々しい新風を吹き込みました。その間の1947年に、山口蓬春は、葉山町に転居し戦後の傑作を次々と生み出してゆきました。そして、日本の四季を象徴的に描きあげた≪春≫≪夏≫≪秋≫≪冬≫の四部作(1961-65)、続いて皇居新宮殿杉戸絵≪楓≫(1968)を制作するなど晩年に至るまで、その制作意欲は衰えを見せませんでした。
本展では、山口蓬春の初期から晩年までの作品約80点を展示いたします。各時代の代表作のみならず、初期の油絵や山口蓬春の制作活動の裏面を垣間見せてくれる習作スケッチや模写なども併せて展示いたします。なお、当館から徒歩3分のところに位置する山内蓬春記念館では、「葉山に開花した山口蓬春の芸術-友情に結ばれた画家と建築家」展を開催しております。併せてご覧くださいますようご案内申し上げます。