「大空を鳥のように飛べたら--」。そのような思いに駆られた技術者たちは、気球でその第一歩を踏み出し、やがてプロペラの飛行機をつくりあげました。今では、大空を越え、人間がつくりあげた科学技術のレベルは宇宙に行くまでの高度なものとなり、人工衛星には、最高水準のコンピュータプログラムが搭載されています。私たちの生活のなかで身近なものから考えてみましょう。例えば、パソコン。ポータブル化され、大量の記憶が可能な上、相互通信ができるなどその機能は飛躍的に伸びています。
子供から大人まで楽しめるテレビゲーム。それは、科学者や技術者たちのちょっとした遊び心から生まれました。そこには彼らの人間ドラマもありました。科学や技術の発展は、社会や生活、文化などと密接な関係にあります。しかし、科学技術が高度化・専門化するにつれ、その内容を理解することが難しくなっています。
「もし、展覧会の開場全体がテレビゲームのような空間だったら-?!」-。元来、効率化や合理化を追求する手段として生まれたコンピュータを、「楽しさ」という視点から追求して生まれたものがテレビゲームです。テレビゲームという“画面の世界”から飛び出し、展覧会の会場という“実空間”に置き換え、さらに「個人」だけが楽しむテレビゲームから「会場に居合わせた多くの人」が同時に楽しむことができないか・・・。
『ユビキタス・ゲーミング・プロジェクト』は、そんな夢を実現し、ユビキタス・コンピューティングの技術をエンターテインメントの分野に応用した世界初の試みです。さらに多数の人が一体となって特定の作業をすることでゲームが成立する「シネマトリックス」やテレビゲームやデジタルテクノロジーの世界とアートの分野が融合した「ピンポンプラス」などこれまでにないゲームの楽しみ方を体験できます。これらのゲームは、もともと存在するゲームに、別の科学技術を応用し、誕生したゲームといえるでしょう。
本展覧会では、ITコンピュータの歴史とゲームを中心としたデジタルエンターテインメントの現在までの流れを追うとともに未来の可能性を探ります。