戦後の復興からまもない1950年代の東京。
ようやく人々の暮らしの中に、家具や道具のデザインへの意識が少しずつ広がりはじめる時期に、「国際デザインコミッティー」(現・日本デザインコミッティ-)は、戦後日本のデザイン運動の先駆けとして、国際交流やデザインの啓蒙を目的に創立されました。
きっかけは、「第10回ミラノ・トリエンナーレ」への参加要請。建築家の丹下健三や吉阪隆正、清家清、デザイナーの剣持勇、柳宗理、渡辺力、亀倉雄策、評論家の勝見勝、浜口隆一、瀧口修造、写真家の石元泰博、そして画家の岡本太郎が集まり、顧問には、坂倉準三、前川國男、シャルロット・ペリアンが名を連ね、時代をリードする多彩なジャンルの人々が顔を揃えました。
その後、彼らの活動の軸となっていったのは、東京銀座の百貨店「松屋」の一画に設けられた売場に置くための商品選定と、併設の「デザインギャラリー」や催事場で行われた展覧会を通じたデザインの啓蒙でした。通産省の G マーク「グッドデザイン商品選定制度」( 1957 年)に先んじて、百貨店という身近な舞台で始められたグッドデザイン運動は、ひろく人々の間に定着し、「日本デザインコミッティー」と改称された現在もなお、活発な活動が展開
されています。
本展では、「デザインコミッティー」の活動と創立メンバーらの交流に焦点を当てるとともに、そこから生まれたコラボレーションにも注目します。柳宗理《バタフライスツール》や森正洋《 G 型しょうゆさし》といった時代を代表するプロダクトとの繋がり、そして旧東京都庁舎( 1957 年)、香川県庁舎( 1958 年)、世界デザイン会議( 1960 年)、東京オリンピック( 1964 年)での協同。彼らが闊達な交流のなかで切り拓いた仕事の広がりと、デザイン・建築・美術など多領域を軽々と横断していく自由さは、転換期となる今の時代を突破する糸口 になるかもしれません。