《海藻と海馬文花器》
1905年頃、フランスのガラス工芸作家エミール・ガレによって制作された花器です。
波間にゆらめく海藻とその間を浮遊する海馬(タツノオトシゴ)が彫刻されていますが、口縁部にはシャルル・ボードレールによる詩の一節が彫り込まれています。
「もの言うガラス」と呼ばれるこの手法は、さまざまな詩文からの引用を刻むことで、器の中に凝縮された世界を注釈するためのものでした。
「人間よ、何人もお前の心の深さを測りえなかった。海よ、何人もお前の奥底の富を知ることは出来ない 」(『人間と海』阿部良雄訳)
19世紀後半は海の世界に対する好奇心がひときわ高まりを見せ、海洋学が大いに進展した時代。
高さ、直径ともに約10センチ前後の小さな花器に、わたしたちは深く象徴的な海の世界へと誘われます。
担当者からのコメント
タツノオトシゴがどのように眠るかご存じですか?
尻尾の部分を海藻などに巻き付けて、潮に流されないように眠るんだそうです。なんて健気...!
龍のように高く飛翔するもよし、タツノオトシゴのように海を漂うもよし。
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