《蝦夷錦》(えぞにしき) または山丹服(さんたんふく)
蝦夷錦または山丹服と呼ばれるこの衣装は、大陸(当時の中国、清代)から樺太を通って、北海道のアイヌの手に渡った絹織物です。
絹の生地に絹糸の刺しゅうが施された、非常に手のかかった立派な衣装です。
これには象徴的に龍の刺しゅうが施され、その龍の爪(指)の数でどんな身分の人が着用していたかがわかると言われており、この4本爪のものは高い身分の貴族や高官が着ていた官服と言われています。
当館にはもう1着5本爪(皇帝が着用)のものも保管されており、開拓使函館支庁仮博物場(現在の市立函館博物館)の開館祝いとして函館の豪商、杉浦嘉七から1879年(明治12年)に寄贈されたものである。その後の年代測定において清王朝の時代に伝わった物として、当時の交易の様子を物語る逸品です。
担当者からのコメント
見た目の色やデザインの細かさにより、当館収蔵品としても人気の高い一品です。
「交易の民」とも呼ばれたアイヌ民族の交易範囲の広さを物語る品でもあり、後に本州へも流出することとなった蝦夷錦ですが、本来の形状を維持したまま国内に保存されている物は非常に少なく、その中でも来歴のはっきりしているものは、数点ではないかと言われています。
胸のあたりに一番大きく配置されている龍の刺しゅうですが、背面にも同じデザインで刺しゅうが施されております。