牡丹花肖柏図屏風 長沢蘆雪 江戸時代中期 18世紀後半
あたりが夕焼けに染まる頃、お坊さん姿の男性が牛の背にのって恍惚とした表情をしています。室町時代の歌人で連歌師の肖柏(しょうはく、1443-1527)が「外出の際は必ず牛に乗った。牛の角を金色に塗ってあるのを人に笑われても動じなかった」という平生の様子を屏風の一双に描いたものです。肖柏は牡丹の花をこよなく愛し、「牡丹花」と名乗るほどだったので、牛の頭が牡丹の花で飾られています。
しっぽの揺れるお尻をこちらに向けるという、ユニークな牛の姿を描いたのは、江戸時代半ばの京都で、円山応挙(まるやまおうきょ)の有力な門人として活躍した長沢蘆雪(ろせつ、1754~99)です。花と酒を愛し、自然体で悠々とした肖柏の生き方に、蘆雪は共感していたのでしょうか。持ち前の大らかな墨づかいを存分に発揮して、雄大な風景のなかに肖柏と牛を描き出しています。
担当者からのコメント
岡田美術館で開催中の「没後220年 画遊人・若冲―」展(~2021年3月28日まで)でこの屏風を展示しています。本展は、当館に収蔵される伊藤若冲の作品7件を中心に、関連する画家の絵を併せて展示するもので、蘆雪は「(若冲と)同時代の5人の絵師」の1人として登場します。他の4人は、蘆雪の先生であった応挙と与謝蕪村、池大雅、曾我蕭白です。尾形光琳・乾山兄弟の絵や、京の雅を伝える金屏風も含めた盛沢山の展覧会ですので、ぜひお越しください。