《蒔絵鶏図印籠》木製漆器 江戸後期
須坂市立博物館銘:松花斉 縦:9.4cm 横:6.1cm
印籠は、薬を携帯する道具「薬籠(やくろう)」として生まれ、江戸時代には腰間装飾具として愛用され、欠くことのできない物になりました。
材質には漆器・陶器・金属などさまざまな素材が使われ、特に精緻な技術を尽くした蒔絵の印籠が最も盛んに作られました。
当館所蔵の印籠の一つである『蒔絵鶏図印籠』には、中国の伝説に由来する平和の象徴「諫鼓鶏(かんこどり)」が描かれています。
諫鼓とは、人民が君主に政治の不満を訴える時に打ち鳴らす太鼓です。
諫鼓に苔が生し鶏の遊び場になるということは、善政により諫鼓を使う人がいない=天下泰平を表しています。
担当者からのコメント:蒔絵の様々な技法を使い、鶏の羽毛やトサカなどの質感がリアルに表現されています。
声高らかに鳴く鶏の声が今にも聞こえてきそうな作品です。
また、印籠の裏面には雌鶏や小鳥たちが戯れる様子が描かれ、世の中の平穏を表しているようにも見えます。
諫鼓鶏にあやかり、今年も平和な一年でありますように。