《牡丹に鶏》伊澤文谷
伊那市立高遠町歴史博物館伊澤文谷(いさわぶんこく、生没年1818~1878年)
高遠藩士で画家。通称、勝三郎。文谷は号。高遠城下に生まれる。若い頃、佐藤薫谷(高遠藩士)の門で画を学び山水風物を得意とする。藩の祐筆ともなる。学問好きで、武よりもむしろ詩文や絵を好んだという。長男・修二は教育家・教育学者、四男・多喜男は政治家として知られる(『高遠町誌』人物篇、他)。
紅白の牡丹とひと番いの鶏(チャボ)を描いた図。《花鳥之図》と称する双幅の一つ(《鶴に日の出》の対)。
大小二本程の牡丹の木が画面下部から上部へと流れるように描かれた逆S字型の構図である。牡丹の花は白が六つで赤が二つ。画面中央の隆々とした幹の上には雄鶏がとまり、地面には雌鶏が佇んでいる。雄鶏は「赤笹」と称する羽色のチャボに見える。雄鶏の頭部と牡丹の赤が鮮やかで、白い牡丹とのコントラストが美しい。
本作品は正月に飾ったものと伝えられるが、画面下部から上部へと描かれた牡丹からは生命力の流れが、番いの鶏からは子孫繁栄への願いが感じられる。掛軸の箱に「伊澤文谷写」とあり、写生したものか。
紙本彩色。本紙の寸法は縦1305×横588ミリ。当館資料番号396番。
担当者からのコメント:高遠町歴史博物館では本作品も含め、伊澤文谷の絵を11点程所蔵しております。文谷にはおめでたい題材を描いた図や俳画が多いようです。
※なお、本作品は現在展示しておりません。