狂言面「猿」伊藤通彦
早稲田大学坪内博士記念 演劇博物館中世のせりふ劇「狂言」で用いられる、猿の面です。小猿の毛皮をめぐって猿まわしと大名が鋭く対立するものの、意外な展開でハッピーエンドに至る「靱猿(うつぼざる)」は、めでたいお祝いの気分に満ちた名作としても知られています。その「靱猿」をはじめ、「猿座頭(さるざとう)」「猿婿(さるむこ)」など、子どもが猿の面と着ぐるみで演じる猿の役は、愛くるしい姿としぐさが客席のハートをわしづかみにします。現代の面打ち師、伊藤通彦(いとうみちひこ/1942年生まれ)が古くから伝わる面を模写した作。縦19センチ×横15センチ、子どもサイズの逸品です。
担当者からのコメント:数え年の6歳から始めるとされる狂言師としての稽古は、「猿に始まり狐に終わる」と言われます。「靱猿」の小猿の役で初舞台を踏み、十数年から二十数年、様々な経験を積み重ねた上で、難曲「釣狐(つりぎつね)」の主役を演じて一人前の狂言師と認められる、その大事な初心の出発点がこの猿の面なのです。世に猿のコレクション多しといえども、猿に変身できるアイテムは他にはありますまい。