第35回 阿部泰之(阿賀町郷土資料館 職員)
阿賀町郷土資料館の阿部泰之です。埋蔵文化財の調査と、本館の管理運営を担当しております。館内の展示については前回の佐藤さんからお話いただきましたので、私からは展示のメインとなる考古資料のフロアについて紹介しましょう。
ここ阿賀町は豊かな自然環境のなか営まれた縄文時代の遺跡が150か所分布し、しかも発掘すれば多数の竪穴住居跡や大量の縄文土器、石器、土偶といった遺物も出土する地域です。行政区的には新潟県に属しますが、出土遺物はお隣の会津系文化の色が濃いことが大きな特徴であり、当館は会津と越後を股にかける縄文時代の資料を豊富に展示しています。考古資料の展示はともすると一方的で「お堅い」感じになってしまうのですが、最近は展示担当の「私」と「見学者」が資料を介して親しくキャッチボールできるような説明の方法を模索しています。また実物の出土品を使った体験型のイベントも開催しており、地域の歴史を学び、手で直に感じられる場にもしたいと考えています。
当館は津南町のなじょもんさんとも連携して「縄文の旅 スタンプラリー」を開催しております。また、当館自慢の魅力的な考古資料をInstagramで(不定期ですが…)発信しておりますので、‘aga_kouminkan’で検索してみてください。私が在席しているときにはご案内もしますので、玄関入ってすぐの受付にお気軽にお声がけいただければと思います。
阿賀町郷土資料館 Instagram
阿賀町郷土資料館 縄文土器で拓本ワークショップ
私のおすすめミュージアム
胎内市美術館
私が次に紹介するのは同じ新潟県にある胎内市美術館です。こちらでは春夏秋冬4回の企画展や様々なワークショップが行われていますが、地元の芸術家の作品や郷土の歴史の紹介に力を入れており、地域密着の美術館です。
さて、令和4年には、阿賀町郷土資料館も参加した考古学の企画展「地味にすごい!下越の縄文時代」の第5会場として胎内市美術館さんも地元資料を展示されました。この時の展示がとても印象に残っています。美術館ならではのクリーンな空間に縄文時代の遺物がとても良く映え、心地の良い見学体験を味わうことができました。特に数千年前のものとは思えない、目にも鮮やかな漆塗りの土器や木工品は、「考古資料」と「芸術作品」の境界を飛び越える素晴らしい造形品でした。展示の白眉となった優美な水差し形の縄文漆器については、次回登場する発掘担当者の伊東崇さんが発見から県の文化財指定までのすべての過程に携わっており、その間のご苦労や資料に対する深い思いも感じられる展示でした。
本稿を執筆している令和5年2月現在、冬の企画展『胎内市在住県展・芸術作家展』、『国史跡 城の山古墳展』、『胎内市のなつかしき写真展』が同時開催されています。城の山古墳展の見学に伺った際、ちょうど関連講演会が開催され、地元の熱心な歴史ファンが集まっていました。様々な人と作品・資料が一堂に会する本美術館は訪れるたびに新たな発見がある場だと思います。
最後に、胎内市美術館は緑豊かな山間の地に立地し、近辺には地域の郷土資料の展示施設である「黒川郷土文化伝習館」、「越後胎内観音」、「道の駅胎内」、温泉施設「クアハウスたいない」もあって、賑わいのある空間です。ぜひ足を運んでみてください。
胎内市美術館 外観
胎内市美術館 展示室