第33回 川端典子(朝日町まいぶんKAN 学芸員)
飛騨みやがわ考古民俗館の三好清超さんからご紹介いただきました、朝日町埋蔵文化財保存活用施設まいぶんKAN学芸員の川端典子です。当館は、富山県朝日町にある町立の博物館です。縄文時代の大型住居が日本で初めて発見された「不動堂遺跡」のある不動堂地区に立地し、考古資料が主な収蔵品ですが、町唯一の博物館として、民俗資料や化石、古文書など、地域の様々な資料を収蔵しています。
当館は常設展・企画展のほか、収蔵資料の調査と普及を兼ねたワークショップを企画して、郷土の歴史と文化を身近に感じ、親しんでもらえるよう取り組んでいます。たとえば、2016年に企画した縄文土器の圧痕から植物の痕跡を探す「圧痕調査ワークショップ」では、地域の方と共に土器の調査を行い、ダイズ属やエゴマの種実圧痕を発見しました。その成果から「縄文ガーデン」という野生植物の野外展示を作り、手作りの磨製石斧で木の伐採実験をしたり、カラムシの繊維で編物を作ったり、エゴマを収穫したりと、植物利用の体験会も開催しています。
朝日町まいぶんKAN 不動堂遺跡での縄文ランプ作りワークショップ
私のおすすめミュージアム
津南町農と縄文の体験実習館 なじょもん
私がおすすめしたい博物館は、新潟県津南町にある「津南町農と縄文の体験実習館 なじょもん」です。私が最初に「なじょもん」を訪れたのは、2018年10月に開催された「津南シンポジウムⅩⅣ馬高式土器の成立・展開・終焉」に一泊二日で参加した時でした。津南町といえば、国重要文化財の火焔型土器と王冠型土器を有する堂平遺跡、国指定史跡の沖ノ原遺跡など、著名な遺跡がひしめく縄文の里です。「なじょもん」では、質の高い企画展のために毎回多くの館外研究員の方と議論をしながら準備して、その中での課題をシンポジウムで討論するという取り組みを何年も続けていらっしゃいます。シンポジウムには地元の方や一般の縄文愛好家も多く参加しており、その幅広い客層には驚かされました。
このように綿密に展示の準備をされているため、企画展については毎回優品揃い、説明も豊富で質が高く、とにかく時間が足りません。圧倒的な情報量です。それに対し、建物はとても温かみがあって親しみやすい印象です。周囲には林があり、林床には野生のマメ類?の芽が出ています。一隅には復原住居もあり、まさに縄文世界といった様子です。なかでも私が特に好きなのは、広々としたロビー展示です。「なじょもん」には常設展示室がない代わりに、ロビーには様々な資料が置かれています。中心には、樹齢400年にもなるケヤキの根っこがあり、艶々した木に登ってみることもできました。一角に置かれたオープンの棚には火焔型土器がさりげなく、ひしめくように並んでいて、その惜しげのなさに驚かされます。また、津南町は古代布のアンギンが発見された地でもあり、その伝統を継承したアンギン編みを復原製作しているグループがあります。ミュージアムショップには伝統文化に関する製品や地域資源に関する書籍が豊富に置かれています。
このように、日常的に見られる資料のポテンシャルの高さと温かみのある場作りが、「なじょもん」独特の雰囲気を醸し出し、何度でも訪れたくなるのです。
津南町農と縄文の体験実習館 なじょもん 外観
津南町農と縄文の体験実習館 なじょもん 展示室