1億5000万円で落札された瞬間、その作品が自動的にシュレッダーで断裁されたニュース。
これには度肝を抜かれた人も多かったでしょう。そして「バンクシー」というアーティストの名前を誰もが知ることになったのではないでしょうか。
そのバンクシーの展覧会がついに大阪にやってきました。2018年からモスクワから世界6都市を巡回し、複数の個人コレクターたちの協力のもと、オリジナル作品や版画、立体オブジェクトなど70点以上の作品が紹介されています。
《ラブ・イン・ジ・エア》SCREEN PRINT 2003年
会場に入るとまず、大型スクリーンにバンクシーの過去の作品やイメージ映像が流れていました。体に浴びせられる映像と音楽。一気にバンクシーの世界へ誘われていくようです。
アーティストスタジオの再現
本展では「消費」「抗議」「政治」「監視カメラ」など、12のテーマごとに作品が展示されています。
《トロリーズ》
スーパーマーケットのカートを狩ろうとする原始人たちが描かれた《トロリーズ》。
面白いと思った瞬間、消費に踊らされる人たちを皮肉った作品だということがわかります。
さらには、私にあてはまるとドキッ。彼の作品には、ユーモアとパッと目を引く強さがあります。そしてそこには政治、社会へ向けての鋭いメッセージも込められています。
それは、難しい表現ではなく誰もが自分なりに解釈しやすい……これこそバンクシーが世界中の人たちに愛される、大きな要因の一つだといえるでしょう。
「ザ・ウォールド・オフ・ホテル」の再現
「ザ・ウォールド・オフ・ホテル」の再現
この展覧会で、バンクシーが2017年ベツレヘムにホテルを開業していたことを知りました。
この「ザ・ウォールド・オフ・ホテル」は彼曰く「世界で一番眺めが悪い」ホテルで、イスラエルとパレスチナ自治区の分離壁に面して建てられています。ビジネスなのか、アートなのかと様々な解釈がされているようですが、政治的意味合いが大きいのは間違いありません。
彼がこのような活動をしていたことに驚きました。バンクシーに対して、ますます謎は深く大きくなるばかりです。
コロナ禍の自粛期間にバンクシーがインスタグラムで投稿した写真をもとに再現。大阪で初公開
コロナ禍において医療従事者を思いやる作品を病院に送ったり、自粛生活の中で自宅のトイレを作品化したりとやさしさとユーモアを交えた作品や活動を見ながら、今とどう向き合えばいいのかを自然に問いかける自分がいることに気づきます。
多彩な表現で今を問う行動(作品)には強い姿勢も感じます。同じ時間を生きる私たちは、勇気と決意をもらっている、そんな気がします。
[ 取材・撮影・文:カワタユカリ / 2020年10月8日 ]
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