「マンモス展」がいよいよ大阪で始まりました。
本展の見どころは、世界初公開となる古代の動物たちの冷凍標本。近年ロシア連邦サハ共和国の永久凍土で発掘されたものです。
ケナガマンモスの皮膚(上)と仔ウマ「フジ」(冷凍標本)(下)
ケナガマンモスの鼻(冷凍標本)
こういった類の展覧会では、骨組の模型や化石などが飾られていることが多く、冷凍標本と聞いても正直ピンときていませんでした。
しかしケナガマンモスの鼻や皮膚、古代仔ウマを前に私はただただ呆然としてしまいました。
そこには、この世に存在した命があったからです。もしそっと触れることができるなら、温かいかもしれない、目を覚ますかもしれないと感じさせるほどです。
しかし実際は、3万~4万年と想像しがたい長い時が流れているのです。
会場には、研究者たちの解剖の様子の映像が流れていました。驚くことに、仔ウマからは凍っていないドロッとした血液が出てきた場面もありました。
本当に生きていたんだということをこれほどに実感することになるとは…。
何?ケナガマンモスの歯!
これらが発見された永久凍土というのは、2年以上零度以下の状態が続いている土や地盤のことで、シベリアやアメリカ大陸のアラスカ、カナダ北部など北半球の陸地の20%を占めているそうです。
しかし温暖化の影響で永久凍土が溶け出し、マンモスや古代動物が発見しやすくなっていることも紹介されていました。
貴重な動物を前に、その事実は私を複雑な気持ちにさせます。
チュラプチンスキーのケナガマンモス
会場風景。マンガ風に紹介されていてわかりやすい。
展覧会の最後には、近畿大学が1996年から取り組む「マンモス復活プロジェクト」についても紹介されています。
採取したマンモスの冷凍標本から取り出した細胞核が動いたなど、プロジェクトチームの努力や成果を知る一方、絶滅危惧種を復活させることで生態系への影響、また生命倫理の問題が浮上していることも知りました。
「マンモス」という太古の動物を通して、自分たちがこれから向き合っていくべき未来、さらに先の先までも考えさせてくれます。
私たちは、過去から現在に続く1本の長い時間の線上に立つ小さな存在でもあり、未来に続く線をどう引いていくかを担う大きな存在でもあります。
こんな風に書いていると、ちょっと小難しい展覧会?と思われるかもしれません。いえいえ、全く逆です。
実際にロシアでの発掘の様子の写真やイラスト、展示監修のいとうせいこうさんや科学者たちのコメントなどのパネルを見ていると、親近感を感じます。
それらは、難しい問題も身近に、誰もが考えるべきこととして受け止められるように誘ってくれます。世界を、未来を考えるきっかけをくれるのです。
[ 取材・撮影・文:カワタユカリ / 2020年7月31日 ]
エリアレポーターのご紹介 | カワタユカリ 美術館、ギャラリーと飛び回っています。感覚人間なので、直感でふらーと展覧会をみていますが、塵も積もれば山となると思えるようなおもしろい視点で感想をお伝えしていきたいです。どうぞお付き合いお願いいたします。
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