デザイナーの皆川明が設立したブランド「ミナ ペルホネン」の世界観を展観する展覧会が兵庫県立美術館で開催中です。
東京で14万人以上を集めての巡回展ですが、兵庫では新型コロナウィルス感染症対策を講じて、会期変更のうえ、日時指定による事前予約制での開催となりました。
東京展での出品に加えて新しい作品も増えており、さらに拡大したミナ ペルホネンと皆川の世界観を体感できます。
開催に先駆けて行われた記者説明会の挨拶には兵庫県知事と皆川氏ご本人が登場。
続く展示解説では、皆川氏が自ら大変丁寧に質疑応答も交えながら対応してくださるという、とても贅沢な時間でした。
安藤忠雄氏設計の個性的な美術館、展覧会のエントランスから、ユニークな空間を生かした展示がスタートします。
ここは「実」の部屋。代表的なモチーフ、タンバリンの世界が展開しています。
続く「森」の部屋。時系列とは無関係に、トレンドに左右されずタイムレスなミナ ペルホネンの生地や洋服が森の木々の葉のように連なっています。
展示は芽、風、根、種、土、空へと続き、それぞれの部屋で、ブランドの哲学や歴史、デザインを生んだアイデアや思考が紹介されています。
そのうちの「土」では、ミナ ペルホネンの顧客から借りてこられた過去の洋服と、それにまつわる顧客本人のエピソードや想いが紹介されています。
若い頃に手にしたミナ ペルホネンの服とともに成長し、親となり子を持った方、自分の親の最期を見送る場でミナ ペルホネンの服を着ていた方など移りゆくそれぞれの服の持ち主の人生に寄り添う洋服たち。
どれもまるで物語のようで大変心を揺さぶられました。
ミナ ペルホネンの洋服とのストーリーだけ集めた本があったらいいのに、と思うほどです。
単に素敵な洋服、ものづくりの紹介にとどまらず、愛用者や、テキスタイルやプロダクトを工場などで作り出している一人一人へのミナ ペルホネンと皆川氏の温かく公平な目線。
着る喜びだけでなく作り手の生み出す喜びまでも一体となった素晴らしいブランドであることがしみじみと伝わる展覧会でした。
今回は会期がとても長く、何回も見てほしい展覧会というお言葉も実際にあったように、何度見ても新しい発見が必ずある、深くて広いミナ ペルホネンの森を表現した展示です。
また、はからずもウィズコロナ、アフターコロナのものづくりや消費について改めて考えさせられる展覧会でもあります。
大量生産とハイスピードの消費にいつしか慣れきってしまった世界で、もう一度大切なものに気づかせ、新しい価値観を持つきっかけをもたらしてくれることでしょう。
他の美術館でも日時指定予約制をとっているところが今とても多いですが、訪れる日を楽しみに待ち、ゆったりとした空間で世界観をじっくりと味わう、そんな過ごし方にも似合います。ぜひ、大切な人と語り合いながらご覧ください。
エリアレポーターのご紹介 | 白川瑞穂 関西在住の会社員です。学生の頃から美術鑑賞が趣味で、関西を中心に、色々なジャンルのミュージアムに出かけています。観た展示を一般人目線でお伝えしていきます。
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