モランディは1890年生まれ。キュビスムのピカソやブラック、未来派のボッチョーニらよりやや若い世代に当たります。
注目を集めつつあった彼らの動きに対し、モランディも画業の初期には近しい作品を描いていた事もあります。
ただ、それは一過性の事。その後は何にも属さない独自のスタイルを歩む事となり、その姿勢は生涯かわる事はありませんでした。
会場では、最初のセクションで初期作品を展示。あとは年代や技法を超え、モチーフや画面構成の特徴ごとに進みます。
セクション1「変奏のはじまり」本展の中心は、卓上の瓶や容器、花瓶などを組み合わせた静物画です。
モチーフは日常的ですが、モランディは配置し、置き直し、組み替えてと試行錯誤を繰り返した末に制作。同じように見える作品にも、徹底したこだわりが込められています。
モランディは生まれ故郷のボローニャをほとんど離れませんでしたが、その作品は世界中の美術ファンの心を捉えました。
熱心なファンの一人が「三代テノール」として名高いルチアーノ・パヴァロッティ。パヴァロッティは海外公演の際にもモランディ作品をトランクに入れ、宿泊するホテルに飾っていたと伝わります。
会場(3階)下のフロアにも静物画が続きます。モランディの静かな作品は、
東京ステーションギャラリーの特徴的なレンガの展示室にとてもマッチしています。
モランディの絵を見ていると、時折「ピッタリ」の部分がある事に気づきます。隣り合った容器の上部が揃っていたり、卓の輪郭のラインと容器の角が揃っていたりと、奇妙にも思えるこだわり。容器の影を卓上に描いた後に塗りつぶして消した作品もあり、独特の感性で制作を進めていった事も分かります。
会場(2階)会場後半は、風景と花の作品です。17年前に東京都庭園美術館などで開催された前回の展覧会も「ジョルジョ・モランディ 花と風景」でした(ただ、静物画を含まなかった前回の展覧会は、どちらかといえばイレギュラーな構成です)。
風景は極端に単純化され、家にはドアも窓もなく、空には雲もありません。花のモチーフは生花ではなく、造花のバラ。静物画と同じように、背景とピッタリ合う部分が見つけられる作品もあります。ちなみにモランディは、花の絵はだれにも売ろうとしませんでした。
セクション10「風景の量感」、セクション11「ふるえる花弁」展覧会には故郷ボローニャにあるモランディ美術館が全面的に協力。同館の所蔵品を中心に、イタリアおよび日本国内のコレクションから多数の作品が揃いました。
これだけまとまってモランディの作品が見られる機会はなかなかありません。作品ごとの微妙な違いは、ぜひ会場でお楽しみください。巡回展は
兵庫県立美術館で開幕し、
東京ステーションギャラリーが2館目。この後に
岩手県立美術館に巡回します(4月16日~6月5日)。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年2月19日 ]■東京ステーションギャラリー ジョルジョ・モランディ に関するツイート