天野さんは1952年、静岡市生まれ。1967年に15歳でアニメーション制作会社のタツノコプロに入り、アニメキャラクター・デザイナーとしてデビューしました。
タツノコプロでは、ヤッターマンなどの「タイム・ボカン」シリーズや「昆虫物語みなしごハッチ」に登場する人気キャラクターを担当。会場にはテレビ放映当時の原画のほか、ウォーホル風に表現したドロンジョなど、当時のキャラクターを用いたオマージュ作品も並びます。
「デビュー アニメーション」
1982年にタツノコプロから独立した天野さんは、小説の表紙や挿絵を手掛けるイラストレーターとしての活動をはじめました。
菊池秀行の「吸血鬼(ヴァンパイア)ハンター“D”」をはじめ、夢枕獏、栗本薫らの作品世界を描写。アニメの世界で身につけた動きのある人物表現に加え、古典から現代美術まで過去の美術表現も欲に吸収して、幻想的な作品を次々に発表。読者を魅了しました。
「装幀画」
天野さんは1987年にスクウェアから発売されたテレビゲーム「ファイナルファンタジー」のキャラクターデザインを担当します。
ゲームのキャラクターは天野さんにとっても新しい分野への挑戦でしたが、バーチャルの世界を想像力に豊かに表現。四半世紀に渡ってその世界観を支え、後進のデザイナーや漫画家にも大きな影響を与えました。
ゲーム「ファイナルファンタジー」
欧米にも創作拠点を持ち活動している天野さん。現地の美術館で神話を題材にした名作に触れる中で、自身も神話や古典を題材にした作品を生み出していきます。
美術家・天野喜孝の実力を遺憾なく発揮した、源氏物語や千夜一夜物語をテーマにしたオリエンタルな作品。装幀画にも見られますが、アルフォンス・ミュシャやグスタフ・クリムトなどの世紀末芸術から想を得た美しい構成が目をひきます。
「神話」
会場最後に並ぶのは、鮮やかな色彩の最新作。それまでの作品に見られた官能性をポップな表現に落とし込んだ、新しい天野ワールドです。
作品はアルミパネルにアクリル絵具で描き、表明に自動車用のコーティングを塗布。高い耐性を実現するとともに、アニメのセル画に通じる「透明な層に覆われた絵画」への想いも込められています。
「DEVA LOCA」
本展は昨年9月に熊本市現代美術館、本年4月に愛知県高浜市のかわら美術館で開催された展覧会の巡回展。来夏には新潟でも開催される予定ですが、残念ながら東京圏での開催は現段階では未確定です。ぜひ兵庫までお越し下さい。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年6月26日 ]
©YOSHITAKA AMANO
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