毎年、ゆかりの地を中心に全国各地で行われている大河ドラマ連動展。最近は東京会場からのスタートが恒例でしたが、今年は2会場目(山口展からスタート)という事もあって、この時期からの開催となりました。
杉文はドラマの放映まで殆ど知られていない存在でしたが、その周辺には幕末維新期の巨星がずらり。本展にも歴史ファンにはこたえられない貴重な史料が出展されています。
序章は杉文が育った萩の紹介から会場中ほどには、なんと松下村塾も出現(塾をモチーフにしたコーナーです)。吉田松陰は幽閉されていた生家の杉家で孟子の勉強会を始め、噂を聞いた近隣の武士が集まったのが塾のきっかけとなりました。建物は、杉家の小屋を改修。後に建て増しされたものの、わずか十八畳余りという小さな塾舎から、日本を変えた多くの英傑が巣立って行きました。
1859(安政6)年に江戸に護送され、29歳で斬首された松陰。旅立ちの前に自賛肖像を八幅作成し、杉家や吉田家、そして久坂玄瑞らに形見として与えました。今に伝わる自賛肖像は六幅、会場にはその全てが展示されています(一部複製・パネルも含む)。
「松下村塾」の表札は、明治後期に野村靖(内務大臣などを歴任した松下村塾塾生)が揮毫したものです久坂玄瑞は杉文の夫で、松陰の義弟。松陰は久坂を「防長年少第一流人物」と高く評価していました。英国公使館を焼き討ちにし、下関では外国船を砲撃。その報復で長州藩は大きな打撃を受けますが、攘夷の意志は変わりませんでした。ちょうどドラマではこのあたりまで放映中です。
明治時代まで活躍したのが、維新の三傑として名高い木戸孝允。松下村塾の塾生ではありませんが、松陰に兵学の教えを受けていた事があります。会場には肖像や書簡のほか、愛用の硯箱なども展示されています。
久坂玄瑞と木戸孝允の史料松陰以外で一番多くの史料が紹介されているのが、高杉晋作です。高杉は親の目を盗み、夜遊びのふりをして松下村塾に出入りしていましたが、塾では「識の高杉、才の久坂」と並び称された逸材でした。
封建的な枠組みを超えた画期的な武力集団・奇兵隊を作った高杉晋作。酒を愛し、詩を愛し、女を愛した高杉は人間味あふれる人物として描かれる事が多く、現代でも多くのファンに愛されています。
奇兵隊関連の史料のほか、高杉所要と伝わる三味線や瓢(ひさご)などもあります会場で一番目をひくのは、巨大な大砲です。馬関戦争で長州が敗れた際、英・仏・米・蘭の四国連合艦隊に接収されたもの。当時においても旧式で小口径でしたが、大砲不足を補うために設置されていました。雲龍文が刻まれた砲身からは、なんとなく呑気な印象をうけます。
《馬関戦争図》と《萩野流壱貫目青銅砲》プレス内覧会には主役を演じる井上真央さんも姿を見せ、笑顔でフォトセッションに応じていました。ドラマはこれから杉文の夫である久坂の死、明治維新、そして楫取素彦との再婚と進みますが、個人的には杉家にとってかなり大きな出来事である「萩の乱」の描かれ方が楽しみです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年6月3日 ]