大阪市立東洋陶磁美術館「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」
文 [エリアレポーター]
カワタユカリ / 2019年12月20日
四代田辺竹雲斎《GATE》2019年(部分)
【当面の間、臨時休館】
思わず息を呑む巨大な造形物の出現。
うねりながら天に昇る生き物のようです。大阪堺市に工房を構え、世界各地で作品を発表している四代田辺竹雲斎のインスタレーション《GATE》が出迎えてくれました。
ここは大阪市立東洋陶磁美術館。
「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション ー メトロポリタン美術館所蔵」が開催中です。
本展は、ダイアン&アーサー・アビー夫妻が収集した世界屈指のコレクションであり、2017年から翌年にかけてメトロポリタン美術館での“Japanese Bamboo Art : The Abbey Collection”(「日本の竹工芸:アビー・コレクション」展)を再構成したものです。
四代田辺竹雲斎《GATE》2019年(部分)
みごとなインスタレーションで熱くなった気持ちは、会場に並ぶ竹の名品によりさらに煽られていくこととなります。
本間秀昭《流紋》2014年
本間秀昭《流紋》、藤塚松星《潮》など、大胆な形の作品は、竹細工、伝統工芸品という言葉から勝手にイメージするものとは随分かけ離れた印象を受けました。
門田篁玉《維新》1981年
一方、細い竹から成る作品は繊細で心が震えます。
かと思えば、面を使った花入れやしっかりと編み込まれたオブジェなど、竹という1つの素材がこんなにも様々なバリエーションを生み出せることに驚かされました。
そしてそれらを作る作家たちに、芸術家と職人という2つの側面があることにも気付かされます。
また1929年帝展で竹工芸品として初めて入選した阪口宗雲斎作の《果物籃 水月》や、四世代にわたる田辺竹雲斎一家の系譜が辿れるなど日本の竹工芸の歴史を見ることで、鑑賞に厚みがもたらされました。
初代早川尚古斎《山高帽》1880~1890年代頃
まっすぐ伸びる清々しい姿や青い香り、時間の経過による変色など、「竹」そのものが持つ美しさや強さと、人の手が創り出す美や技が交差する点に立ち、色々な情景が頭の中を過ります。
竹工芸だけでなく伝統工芸を改めて見ていこう、そんな気持ちがムクムクと湧き上がってきました。
入口で再び《GATE》を見上げます。
組目から陽の光がこぼれたそれは、美しく逞しく、未来を感じさせる姿をしているのでした。
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カワタユカリ
美術館、ギャラリーと飛び回っています。感覚人間なので、直感でふらーと展覧会をみていますが、塵も積もれば山となると思えるようなおもしろい視点で感想をお伝えしていきたいです。どうぞお付き合いお願いいたします。
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