展覧会概要
愛知県の豊田市美術館で「クリムト展」が開催されています。今展はクリムト没後100年と日本オーストリア友好150周年を記念するもので、作品数約120点のうち、25点以上のクリムトの油彩画(国内では過去最多)を含む、大規模なものです。
今春、東京ではクリムトに関連する展覧会がいくつも開催されました。(東京都美術館「クリムト展」、国立新美術館「ウィーン・モダン」、目黒区美術館「世紀末ウィーンのグラフィック」)
そのうちのひとつが愛知県に巡回してきたのですが、出品されている《オイゲニア・プリマフェージの肖像》(豊田市美術館蔵)と、《人生は戦いなり(黄金の騎士)》(愛知館美術館蔵)の2点は、どちらも地元愛知県の美術館の所蔵です。それぞれの美術館の所蔵作品展の折によく見かけていた親しみもあり、今展の展示室で作品を見つけたときには、心の中で「お帰りなさい」と、あいさつしました。
グスタフ・クリムト《オイゲニア・プリマフェージの肖像》 1913/1914年 油彩、カンヴァス 140×85cm 豊田市美術館
展示室にて
前半ではクリムトの初期作品や弟のゲオルグの作品(金属彫刻)、クリムトに影響を与えた日本の浮世絵や小物などの資料も見ることができます。ゲオルグのレリーフは一見地味な印象ですが、とても興味深いものです。
「Chapter1.クリムトとその家族」展示の様子
「Chapter3.私生活」展示の様子
今展の目玉としては、チラシでも大きく取り上げられた《ユディットⅠ》、日本初公開となる《女の三世代》、オリジナルではありませんが《ベートーヴェン・フリーズ》(原寸大複製)などが上げられると思います。
グスタフ・クリムト《ユディトⅠ》 1901年 油彩、カンヴァス 84×42cm ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館 © Belvedere, Vienna, Photo: Johannes Stoll
《ユディットⅠ》と《ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)》の額をよく見ると、ずいぶんと手の込んだ装飾が施されています。この額と妖艶な雰囲気のモデルの組み合わせは、作品全体の印象を数段、強めているように思います。これらの額は弟のゲオルグによるものだそうです。
その他に、印象深かったのが風景画です。クリムトと言えば、金色を多用した女性像のイメージが強いのですが、《アッター湖畔のカンマー城Ⅲ》、《丘の見える庭の風景》は、全体に緑の強い画面の中に屋根の赤茶や、草花の白、青、赤、黄がバランスのいいアクセントになっていて、眺めていてとても心地良いものです。
数名の方から感想などを聞きました。中には、東京展を見てきた方がいて、展示室の天井高や、作品の並び順、照明の違いにより、「同じ作品でも印象がガラリと変わる」こともあったそうです。
他にも、「なぜ、クリムトの良い作品が2点も愛知にあるのか?」と、不思議がる方もいました。この点は、確かにとても稀有なことだと思います。
そういえば、会場では金色のペンダントやスカーフなどを身に付けた方を、多数見かけました。密かにドレスコードが出ていたようで、これもクリムト展ならではの光景だと思います。
特設フォトスポット「金のフォトスポット」
会期中は土日祝日のみ、美術館と最寄りの豊田市駅の間で臨時バスが運行されます。
閑話休題
ひょっとしたら、今回の一番の楽しみはミュージアムショップかもしれません。定番のクリアファイルやメモ帳などの文具類も豊富な絵柄がそろっています。しかし、ショップの一番目立つ陳列台には金色の包装のお菓子類の山があります。奥の方には、大人向けに金色のお酒もあります。スーパーの売り場みたいに、買い物カゴまで用意されています。
聞くところによると、特製トートバッグは隠れたヒット商品だそうです。見た目はちょっと地味かもしれませんが、分厚くて重いクリムト展図録を入れてもヘタラない、実用的な優品だそうです。
以上
エリアレポーターのご紹介
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ひろ.すぎやま
近現代美術、演劇、映画をよく見ます。
作品を見る時は、先入観を避けるため、解説などは後から読むようにしています。
折々に、東海エリアの展覧会をレポートしますので、出かけていただく契機になれば幸いです。
名古屋市美術館協力会会員、あいちトリエンナーレボランティア。
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