江戸の浮世絵、近代の日本画・油彩画、そして現代美術まで俯瞰する本展。妖怪について、本展では「人以外のもの、もしくは人が、人以外のものの形をとって出現したもののこと」と定義しました。
展覧会タイトルの「妖怪」がカッコとじなのは、妖怪に幅をもたせたため。特に後半の現代美術では、さまざまな形になった「妖怪」が登場します。
‘のれん’のような幕をくぐって中へ会場は3章構成です。時代を追うように、江戸時代の浮世絵、明治期の新聞錦絵、水木しげるさんの妖怪画、現代美術と進んでいきます。
1章「妖怪登場 ─ 大都市・江戸に生まれた物語」
2章「妖怪変化 ─ 近代にあらわれたさまざまな妖怪像」
3章「妖怪はここにいる ─ 現代アートにみる妖怪像」
なお、松井冬子さんの幽霊画をあえて中盤で展示したのは、江戸時代の幽霊画と比較して見てもらいたいため。現代美術と違うカテゴリで見る松井冬子さんの絵は、なかなか新鮮に思えます。
江戸時代の画家と松井冬子さん。幽霊の競演本展最大の特徴が、3章の現代アートでしょう。想像力豊かなアーティストによる異形の像は、見ごたえたっぷりです。
洋梨のオブジェに本人から型取りした鼻を付けたのは、森村泰昌さん。子供の姿ですが口は鳥、迦楼羅天(かるらてん)のような彫像を古典的な乾漆像で作ったのは、加藤大介さんです。
森村泰昌《ボデゴン(鼻つき洋梨)》、加藤大介《浄化の秘宝》現代美術家の中でも多くの作品が出展されているのが、鎌田紀子さん。岩手在住の人形作家で、東北で精力的に活躍されています。
最後のコーナーは文字通り壁から天井まで、すべて鎌田さんの作品です。頭が大きく長い手足の人形は、恐ろしさ8割、愛らしさ2割といった風貌。ぜひこの空間で、現代の妖怪を感じてみてください。
数多く出展された鎌田紀子さん。今後の活躍も注目です三井記念美術館の「大妖怪展」のレポートでもご紹介しましたが、この夏に開催される三つの妖怪展(本展、
大妖怪展、
そごう美術館の「
幽霊・妖怪大全集」)では、半券持参で相互割引を実施中。
三展全てをまわると、アメリカ海軍の艦船や海上自衛隊の艦船を間近で見ることができる日本でも唯一のクルージングツアー「YOKOSUKA軍港めぐり」の乗船チケットをプレゼント。豪華企画は、8月3日から各館先着200名のみです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年7月22日 ]