2020年3月22日(日)に開館した、泰巖(たいがん)歴史美術館。東京・町田市で住宅や不動産を手がける太陽グループの山中泰久氏が蒐集したコレクションを管理する、一般財団法人太陽コレクションが開設しました。
所蔵品は戦国時代から江戸時代初期に至る古文書・書画・武具・茶道具などが中心。歴史的に重要な意味を持つ史料も含まれています。
「泰巖」は、織田信長の戒名である「総見院殿贈大相国一品泰巖尊儀」の一部。「泰然自若として威厳のある」という意味です。
立地は、小田急線町田駅北口より徒歩5分。住宅地の中にある、亀甲模様の建物が目印です。
館に入ってすぐに目に入るのが、実物大に近い規模で再現された安土城天主閣。信長が1576(天正4)年に築いた安土城は、日本で初めて天主が設けられた城とされています。
信長の死後に焼失した安土城には不明な点が多いものの、今回は過去の文献を手がかりに復元。最上層は金箔、内部は天井絵が描かれた格天井、下層の八角屋根は総朱塗りといわれる、いにしえの姿がよみがえりました。
美術館の2階に上がると、天主閣と同じ高さ。天主閣は有事の際以外は使われない事が多いのですが、信長はこの天主に居住したと言われています。
2階では信長の生涯を追った映像「織田信長の至宝」も。約19分と長めですが、信長の生涯がドラマチックに描かれており、見どころたっぷりです。ぜひ通して鑑賞ください。
3~5階が展示室で、まず3階は「信長の時代」。信長の一族、家臣、そして同時代の戦国武将らによる書状類が並びます。
信長が最も恐れたのが、“甲斐の虎”武田信玄と“越後の龍”上杉謙信です。信長は両者との決定的な対立を避けており、その関係を物語る書状は注目されます。
来館者の人気を最も集めているのが、4階「合戦の時代」。室町幕府の権勢が低下し、守護大名に代わって全国各地に戦国大名が勃興。領土拡大を目指して他の大名と争い、合戦の時代に突入します。
集団での戦いや、鉄砲の登場など、戦術の変化もあり、戦国時代の甲冑は大きく発展しました。実用性が重視されると同時に、当時の武士の気質を反映し、奇抜な意匠も多く見られます。
展示室には武器も展示。重要文化財を含む日本刀の他、奥には火縄銃がずらり。戦国時代末期の日本には50万以上の鉄砲があったとされ、当時は世界最大の鉄砲保有国でした。
5階は「信長と茶の湯」。京都・妙喜庵にある国宝の茶室「待庵」を再現、展示ケースには茶道具が並びます。
茶の湯を愛した信長。“名物狩り”で畿内と近隣諸国から茶道具を集め、しばしば茶会を開催しました。茶の湯を利用した統率「御茶湯御政道」は、秀吉の時代にも引き継がれていきました。
取材前は「町田に戦国武将の博物館?」と思っていましたが、予想を大きく上回る充実ぶりです。歴史ファンはもとより、目を引く戦国史料は、訪日外国人にもおすすめできそうです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年3月24日 ]
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永原 慶二 (著), 本郷 和人 (解説) 講談社 ¥ 1,859 |