動物はヒトのように背骨をもつ「脊椎動物」と、背骨をもたない「無脊椎動物」に分かれています。一般的な認知度の低い無脊椎動物の世界を掘り下げていく展覧会が、国立科学博物館ではじまりました。
企画展「知られざる海生無脊椎動物の世界」会場
会場は4つの章で構成。第1章「多様な動物の世界」は、円形の空間に系統樹を展示。身近な動物から微小な動物、臓器のない動物や動かない動物など、34に分類された現世の動物(後生動物)の様々な進化の道筋を表しています。
第1章「多様な動物の世界」
第2章は「不思議な海生無脊椎動物の形や生態」。無脊椎動物とされる動物33門のうち、海にすむ動物は31門。さらに海でのみ生活を行っている18門の体のデザインをみていきます。
多くの動物は、左右対称の体のつくりをして、基本的に口から肛門にいたるチューブ状の消化管をもっています。口のまわりには、眼などの感覚器官が発達していることで運動性が高まり、効率的に餌を探すことができるようになった動物もいます。
第2章「不思議な海生無脊椎動物の形や生態」
海の中で生活している海生無脊椎動物には、様々な体を支えるつくりがみられます。カニは硬い外骨格で体表を覆っていますが、ウニやカイメンなどは、骨片という微小なパーツを組み合わせています。体のやわらかなサンゴは、体に取り込んだ海水の水圧を利用して体を支えています。
第2章「不思議な海生無脊椎動物の形や生態」
無性生殖の生き物は、体がさけたり体から芽を出すことで、自分と同じ遺伝子を持つ分身をつくることができます。ヒトデや群体ボヤは無性生殖を行うことができ、新たな個体に分裂します。
第2章「不思議な海生無脊椎動物の形や生態」
海の中では、鰓や血管系を発達させて酸素を海水から体の表面を通して取り込む動物もいます。クラゲは、傘を閉じたり開いたりする動きによって、体の表面から酸素を取り込み、水管とよばれる管を通して酸素を体内に巡らせています。
第2章「不思議な海生無脊椎動物の形や生態」
第3章「人とのかかわり」では、人の暮らしのなかにも多く関わっている海生無脊椎動物を紹介します。食料や宝石として、また日用品として利用されている一方で、寄生虫や食材の汚損生物、侵略的な外来種など暮らしに悪影響をあたえるものも知られています。
近年、耳にするアニサキスもそのひとつです。諸説ありますが、イカを細かく切ってイカそうめんにして食べるのは、アニサキスによる食中毒を防ぐためでもあります。
第3章「人とのかかわり」
第3章「人とのかかわり」
第4章「海生無脊椎動物を理解する意義」では、絶滅が危惧されている海生無脊椎動物や博物館の標本の存在意義、研究の現状についてまとめています。
会場内には、クイズコーナーも設置され、多様な無脊椎動物の世界を紐解いていくことができます。同時に開催している特別展「大哺乳類展3」とあわせて鑑賞することで、幅広い動物の生態にふれることもできます。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2024年3月11日 ]