『鉄人28号』『マジンガー Z』『機動戦士ガンダム』など、それぞれの時代で子どもたちを熱狂させてきした巨大ロボット。これほど多くのロボットアニメが受け入れられてきたのは、日本ならではといえるでしょう。
近年までのロボットアニメ約45タイトルで「巨大ロボットとは何か?」を考えていく展覧会が、横須賀美術館で開催中です。
横須賀美術館「日本の巨大ロボット群像」
巨大ロボットはもちろん空想の産物ですが、展覧会の冒頭では現実の世界に現れた巨大ロボットが紹介されています。
2009年、東京・台場の都立潮風公園に登場したガンダムの立像。全高18メートルという大きさはアニメの設定そのままで、アニメの中にいたガンダムのイメージが、現実世界へと広がりました。
第1章「日本各地で“現実化”した巨大ロボットたち」
日本における巨大ロボットアニメの嚆矢が、1963(昭和38)年にアニメ化された『鉄人28号』。ちなみに「巨大」ではないものの、初の国産テレビアニメ『鉄腕アトム』が放送されたのもこの年です。
アニメ放送以降も、カラーアニメやCGを駆使した実写映画など、時代の流れにあわせて何度も映像化されています。
第2章「巨大ロボットの元祖「鉄人28号」の変遷」
巨大ロボットアニメの最初の黄金期が1970年代です。1972年末からTV放送された『マジンガー Z』の人気が沸騰。玩具展開と連動した子ども向けのロボットアニメが続々と制作されました。
ここでは特に卓越したデザインとアイデアで注目すべき巨大ロボット、5タイトルを中心に紹介。マジンガー Zは、頭部に操縦ユニットであるホバーパイルダー(後期はジェットパイルダー)が合体。ゲッターロボは3機のゲットマシンが合体ポジションを変えることで機能が変化します。
第3章「搭乗、強化、合体、変形 ― 70年代巨大ロボットの想像力」
70年代を席捲したロボットアニメブームは一段落を迎えますが、1979年には『機動戦士ガンダム』が登場。ロボット型の兵器=モビルスーツで人間同士が争う独自の世界観で、放送終了後に発売されたプラモデルや劇場版映画も大ヒット。現在まで多くのファンに支持されています。
会場の床面には、物語の中で設定された等身大のガンダムが出現。足元から頭まで歩きながら、その大きさを実感してください。
第4章「ロボットが現実に「いる」世界 ― 「機動戦士ガンダム」」
1980年代には『機動戦士ガンダム』の影響を受けたアニメが次々に登場。ロボットの設定も、より緻密になっていきました。
そのような「らしさ」を追及する流れから、ロボットの大きさが小さくなっていったことは、あまり知られていないかもしれません。1970年代には100メートル以上のロボットもいましたが、この時代には人との対比がしやすい大きさに。リアルさの演出に一役買っています。
第5章「「大きさ」から巨大ロボットのリアリティを実感する」
空想の世界にいるロボットですが、内部のメカニックを示すことで、リアリティが向上します。『マジンガー Z』の番組エンディングに「内部図鑑」が使われたことを皮切りに、1980年代にはロボットの「内部メカ」にまつわる動きが加速していきました。
現在ではロボットのデザインは模型化(=製品化)をあらかじめ意識することは当たり前で、模型化の際に内部メカを含めて新たにデザインされることも頻繁に行われています。
第6章「ロボットの「内部メカ」、1980年代以降の大発展」
1980年代後半になると、巨大ロボットアニメは飽和状態になりますが、かつてのスーパーロボットを見直す動きや、現実離れしたデザインではあるものの、独自の世界をつくっているロボットなども登場しました。
ここでは1990年代に登場した5つのロボットアニメが紹介されています。
第7章「荒唐無稽なロボットたちの帰還 ― アニメ本来の楽しさとは?」
展覧会の最後は、巨大ロボットのとりこになった6人の識者たちへのインタビュー。「なぜ、巨大ロボットは二本足で歩くのか?」「なぜ、巨大ロボットには格納庫が必要なのか」などの問いに、映画監督、ゲーム・プロデューサー、建設機械メーカー社員などが、プロの目線で答えます。
最終章「巨大ロボットについて語る ― 60年の旅路の終わりに」
そもそも実物が存在しない巨大ロボットですが、アニメの資料だけで構成するのではなく、「実物大」のパネルでリアルさを感じてもらうなど、企画側の熱い思いも感じられる展覧会です。会場は撮影も自由。福岡市美術館からの巡回で、横須賀市美術館が最終会場です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2024年2月9日 ]