江戸時代から続く最後の紅屋「伊勢半本店」が運営する資料館、紅ミュージアムで、雛道具研究家の川内由美子さんが長年にわたって蒐集したミニチュアを紹介する展覧会が開催中です。
写真ではサイズ感が分かりづらいかもしれませんが、展示されている台の縁の目盛りをご覧ください。長い線の間が1cmです。
まずは江戸の名店・七澤屋が手掛けた精巧なミニチュア雛道具から。左側の台は、書物を置いて読むための書見台。右側の箱は、書き物をするための紙を入れる料紙箱です。
こちらは豪華絢爛な提重。屋外での酒宴などのために携行した重箱で、現代風にいえばお弁当箱です。酒筒や盃もセットになっています。
会場には雛道具だけでなく、昭和レトロな趣にあふれた日用品のミニチュアも紹介されています。
こちらは下駄箱。下駄を履かなくなった現代でも、その名前が残っています。日本の家庭で下駄箱が普及しはじめるのは明治時代以降です。
和裁用具を入れる針箱は嫁入り道具のひとつで、家庭の必需品でした。
左の針箱の上段引き出しの内部は4つに仕切られており、嵌め込み式の蓋は取り外すこともできます。
こちらは食器類。極小サイズでありながら、さまざまな絵柄も表現されており、驚愕としかいいようがありません。
明治30年代後半から、前時代の文化や風俗を懐かしむ江戸懐古趣味が広まると、町に残っていた物売りや屋台などをミニチュア化した江戸小物玩具が制作されました。
こちらは江戸小物玩具「笊(ざる)売り」。籠、笊、篩(ふるい)などの竹製品が並びます。
ポリロイド(硬質塩化ビニル)でつくられたミニチュア家電・家具類には、洗濯物を絞るためのローラーが付いた洗濯機、四つ足の白黒テレビなどがありました。
朝食でパンを食べる習慣にあわせて広まったポップアップ式のトースターなど、昭和30年代半ばの生活が感じられます。
企画展は地下で開催されていますが、上階では常設展も鑑賞できます。紅花の花びらから赤色色素を抽出して作られる「紅」の解説や、江戸時代を中心に日本の化粧の歴史を振り返る展示などを楽しめます。
化粧道具や化粧品ラベルに咲く「梅と桜」を紹介するテーマ展示「梅と桜」も開催中です。
ミニチュア好きにはたまらない企画展。会場内は展示品のみなら撮影も可能です。東京・南青山にある紅ミュージアムへは、表参道駅から根津美術館や岡本太郎記念館の方に進み、徒歩で12分ほど。土・日・祝日の観覧は事前予約制なので、ご注意ください。
[ 取材・撮影・文:M.F. / 2024年2月23日 ]
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