1982年、熱海市の高台に開館したMOA美術館。創立者・岡田茂吉(1882 ~ 1955)が蒐集した東洋美術を中心に絵画、書跡、彫刻、工芸など多彩な名品を所蔵していますが、何といっても最も人気が高いのが、尾形光琳による国宝《紅白梅図屏風》です。
その《紅白梅図屏風》をはじめ、《色絵藤花文茶壺》《翰墨城》と、館蔵の国宝3件が同時に鑑賞できる嬉しい展覧会が開催中です。
MOA美術館入口
MOA美術館へのアクセスは、公共交通機関ならJRとバスが一般的。JR熱海駅の改札を出て左手へに向かい、一番奥のバスターミナル8番乗り場から、MOA美術館行きバスで約7分です。
チケットは、スマホで購入できるオンラインチケットの方が、窓口よりもお得です。7つのエスカレーターを乗り継いで、展示室に向かいます。
3つ目のエスカレーターに続く「円形ホール」は、人気のフォトスポットです
巨大な漆の扉から館内に入ると、いよいよ展示室へ。天気が良い日は、正面の窓から相模湾の絶景もお楽しみいただけます。
窓からは相模湾が
美術館は2016年から2017年にかけて展示空間を刷新。現代美術家の杉本博司と建築家の榊田倫之さんが主宰する建築設計事務所「新素材研究所」が手がけた室内はとても見やすく、ガラスの存在を忘れさせる抜群の環境です。
MOA美術館 名品展 国宝「紅白梅図屏風」展示風景
今回の展覧会は中国の絵画からスタートし、奥に進むと日本絵画へ。久隅守景の《竹林七賢人図屏風》は、中国・晋時代に俗世を離れて竹林の中に遊んだ七人の隠士を描いた作品、竹林の七賢は多くの絵画で表現された人気の画題です。
久隅守景は狩野探幽の弟子で、極めて優れた後継者でしたが、子息の不祥事などで狩野派からは離れたとされています。
久隅守景《竹林七賢人図屏風》江戸時代 17世紀
奥に進むと、いよいよ国宝の登場です。
まずは、野々村仁清による《色絵藤花文茶壺》、仁清の茶壺の中でも最高の傑作として名高い品です。仁清ならではの白釉の上に、巧みな構図で藤花を表現。京風文化の象徴的作品ともいえる茶壺です。
国宝 野々村仁清《色絵藤花文茶壺》江戸時代 17世紀
そして日本美術史に残る傑作、尾形光琳による《紅白梅図屛風》。末広がりの水流を挟んで、左隻に白梅、右隻には紅梅が配されています。
画面いっぱいに描かれている紅梅に対し、白梅は幹の大部分は画面の外と、極めてデザイン性が高い作品です。光琳晩年の作とされています。
国宝 尾形光琳《紅白梅図屛風》江戸時代 18世紀
こちらは重要文化財ですが、《山中常盤物語絵巻》も必見です。奥州に下った義経を都から訪ねにいこうとした母の常盤御膳が道中で盗賊に殺され、義経がその仇を討つというストーリー。鮮やかな色彩が目を引きます。
重要文化財 伝 岩佐又兵衛勝以《山中常盤物語絵巻》江戸時代 17世紀
3つ目の国宝、手鑑《翰墨城》は階段を降りた先の展示室にあります。手鑑とは、古筆の断簡を貼り込んだ作品集。翰墨城は古筆三大手鑑のひとつです。
翰墨城の「白氏文集切」は、平安時代を代表する書の達人で、三跡のひとりである藤原行成の真筆。行成が本当に書いたと断定できるものは少なく、とても貴重な作例です。
国宝《翰墨城》奈良~室町時代 8~15世紀
国宝《紅白梅図屛風》が鑑賞できるのはこの時期だけ、館内は全て撮影自由というのも嬉しいポイントです。美術館に隣接する瑞雲郷梅園での紅白梅とともにお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:M.F. / 2024年2月11日 ]
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