アート集団、チームラボを代表する施設として知られていたチームラボボーダレス。2019年には219万超の来場者数を記録し「単一アート・グループとして世界で最も来館者が多い美術館」としてギネス世界記録に認定されるなど高く評価されていましたが、入居していたお台場の施設の全館閉館にともない、2022年8月で営業を終了していました。
新たな移転先になったのが、注目を集めている麻布台ヒルズ。新しいボーダレスでは、50以上の作品が複雑に関係しあいます。
チームラボボーダレス 入口
入口に近づくと、エントランスにも作品があります。床にマークされている指定の位置でカメラを構えると、壁と天井に書かれた「teamLab★ Borderless」の文字が歪みなく映りますが、裸眼で見てもなぜかレンズのようには見えません。
歪みがないように撮影するには、カメラをあおる角度にも気を配ると、水平がビチッと決まります。
《人間はカメラのように世界を見ていない》
ゲートを通って進むと、暗い階段を下がった先から、いよいよ展示が始まります。お台場は2フロアでしたが、麻布台ヒルズでは1フロア構成になりました。
なお、ボーダレスは床面にミラーを使った作品が多いので、気になる方は服装にご注意ください。
階段を下がり右手から展示が始まります
冒頭の空間は、お台場でも見られた花の作品。巨大な空間には複数の季節が同時に存在し、季節のうつろいにあわせて、花々も変化。作品はプログラムでリアルタイムで描かれており、人の動きにも連動しているので、二度と同じ状態にはなりません。
これまでの作品も、さまざまなバージョンアップが加えられています。
《花と人、コントロールできないけれども共に生きる – A Whole Year per Hour》
中央の大きな空間には、お台場でも人気を集めていた滝の作品があります。チームラボボーダレスを代表する展示空間です。
「滝の作品」と書きましたが、こちらも時間によって刻々と変わります。花々で満たされたり、漢字が降ってきたりと、バリエーション豊か。こちらも人の動きに反応し、作品が変化していきます。
《人々のための岩に憑依する滝》
新しくなったボーダレスの最大の見せ場が「Light Sculpture」の空間です。お台場にも類似の展示がありましたが、足元からも光が出るようになり、作品数も大幅に増加。作品によっては、完全に光に包まれるような感覚が味わえます。
ここだけで20以上の作品がありますが、個人的に最もおすすめは、音楽と光のシンクロが素晴らしい《Light Vortex》。2番目をあげるなら、光の交点に手をかざすと光が上に飛んでいく《人々と共に蒸発する光》しょうか。
「Light Sculpture」
この世とは思えないような幻想的な感覚を覚えるのが《Infinite Crystal World》。2013年から続くシリーズの最新版ですが、新しいボーダレスは天井高が高いこともあり、没入感が格段に増しています。
光のパターンが多いので、こちらもぜひ時間をとっていただきたいスペースです。展示空間の奥まで進むとやや広いスペースがあるため、撮影にもピッタリです。
《Infinite Crystal World》
《マイクロコスモス - ぷるんぷるんの光》は、お台場にはなかった作品です。こちらもミラーで無限に広がる空間の中を、ぷるんぷるんと不思議な輝きを放つ球体が動き回ります。
ぷるんぷるんの光はレール状の上を進みますが、ある場所まで来ると壁を通り抜けて別の空間に移動します。どこに出るか、探してみてください。
《マイクロコスモス - ぷるんぷるんの光》
通路状のスペースにも各所に作品がありますが、ぜひ見つけていただきたいのが《中心も境界もない存在》。黒い核のようなものに触れようとしても、決して触れることができません。それどころか、壁のように見えていた境界も、実際には存在しません。目を疑うような、不思議な作品です。
《中心も境界もない存在》
館内にある唯一の喫茶スペースが「EN TEA HOUSE」(他に自販機スペースはあります)。おすすめは、緑茶とココナッツミルクのジェラート+ドリンクのセットメニュー「凍結緑茶ココナッツセット」(1,300円)。注がれた茶から花が生まれて咲き、器を手に取ると花は散って器の外へ。ジェラートからは茶の木が生え、移動させると茶の木は枯れて、新たな場所で再び生え茂ります。
「EN TEA HOUSE」
《スケッチオーシャン》は、チームラボ好きにはおなじみのコンテンツです。紙に自由に魚の絵を描くと、他の人が描いた魚とともに泳ぎだします。
新しいボーダレスでは、描いた魚をオリジナルのプロダクト(缶バッジ、Tシャツ、トートバッグ、ハンドタオル)にして、持ち帰ることもできるようになりました(別料金)。
《スケッチオーシャン》
小さな作品も含めて非常にクオリティが高く、じっくり時間をとりたいものばかり。それぞれの作品の連携も大幅に増加し、さらにボーダレス(境界がない)な世界感が深まりました。
海外でも大きなプロジェクトが相次いでいるチームラボですが、あらためてその魅力を実感できるミュージアムです。首都圏近郊にお住まいの方は、その幸運を喜ぶべきだと思います。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2024年2月5日 ]