大正ロマン画家の代表ともいえる竹久夢二(1884-1934)。彼の作品は多くの人がどこかで目にしているのではないでしょうか?
今日は京都嵐山の福田美術館に出かけてみました。美術館が所蔵する、夢二と親交のあった故・河村幸次郎氏(下関市立美術館名誉館長)のコレクションから約230点の作品が公開されることになりました。個人収集による作品は今までなかなか目にすることができなかったものが多く、新しい夢二の魅力を発見できる展覧会です。
竹久夢二のすべて展
小顔で手足がすらっと伸び、すこしくねらせた立ち姿の女性は“夢二式美人”といわれ、現代も人気です。目は大きく少し憂いを感じさせる表情は浮世絵や日本画の美人とはちょっと違います。日本髪に着こなす着物もどこかモダンでお洒落、色彩や持ち物に可愛さを感じます。
色数はさほど多くないのですが、朱と黄を使い、柄には大きな花や幾何学模様も使用しています。しかし全体的に“するり”とした感じで、私にはなぜか時間がゆっくりと流れているように見えます。
《初夏》 夢二式美人 ABCの文字がモダン
竹久夢二は岡山に生まれ、明治大正昭和の時代を生き、49歳の若さでこの世を去りました。新聞や雑誌への掲載がきっかけで独自の美人画は当時すぐ評判となり、1909年には初の画集『夢二画集 春の巻』が刊行されます。さらに才能は留まらず、挿絵や装丁、テキスタイルなど幅広い活躍をみせます。子供向けの絵本や、セノオ楽譜の表紙に至るまで多岐にわたる作品はマルチなクリエイター、夢二の才能を反映しています。
《青春譜》 自身と彦乃を描いたものとされる
《初春》など 可愛い表情が印象的
《セノオ楽譜NO44 蘭燈》
モデルとなった女性たちも魅力的で、岸たまきさんや笠井彦乃さんとの恋愛生活は夢二の制作活動を大きく支えました。恋多き夢二からお葉さんへのラブレターも読むことができます。
永井兼代(お葉)宛書簡
竹久夢二は旅好きでもありました。恋人を伴い旅先での制作にいそしみますが、恋人との死別など辛く悲しい日々を過ごすこともありました。今回長崎を旅して描いた《長崎十二景》もそろって展示され、風土や土地の歴史を敏感に背景に取り入れるなど、今で言うインスタ映えするような画面構成が見えます。
《旅》 理想の生活イメージ
長崎十二景より2点 人物と風景をうまく組み合わせている
絵葉書
その他、詩や短歌、小説も自ら書くなどマルチな才能が発揮されています。夢二のデザインした雑貨を販売する「湊屋絵草紙店」では、可愛くデザインされた千代紙や便箋などを取り扱い、若い女性たちの身近な生活に取り込まれました。ミュージアムショップにもカワイイグッズが並んでいます。
雑誌の表紙や本の装丁展示風景
ミュージアムショップ
出展にはスケッチも多数あります。ふとした瞬間の表情やポーズにささっと筆を走らせて、美しい仕草を探すような作画意欲を感じることができます。
スケッチブック
夢二の旅好きが功を奏したのでしょうか、現在も竹久夢二作品がコレクションされた記念館などが縁のある岡山や伊香保、金沢などにみられます。訪れた地の思い出とともに夢二の生きた証がそこにあります。美人画だけでない夢二の魅力を発見しに是非出かけてみてください。
福田美術館の喫茶コーナーからは嵐山の風景がこんなに近くに見ることができます。
嵐山渡月橋を眺める特等席
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2023年7月21日 ]
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