漫画もアニメも大ヒットした『ちびまる子ちゃん』、ベストセラーのエッセイ『もものかんづめ』などで知られる、さくらももこ(1965-2018)。早すぎる永眠から5年目を迎えました。
代表作の数々を、直筆原稿やカラー原画とともに、これまでにないボリュームで紹介する展覧会が、そごう美術館で開催中です。
そごう美術館「さくらももこ展」会場入口 ©さくらももこ ©さくらプロダクション
展覧会は序章「さくらももこができるまで」から。さくらももこは静岡県清水市(現・清水区)生まれ。生家はちいさな八百屋で、3歳の頃、自宅のふすまに初めての絵を描き、やがてまんが家を志すようになりました。
まんが家デビューまでの時間を、少女時代の私物や当時の情景を描いたイラストと共に、大きな年表でたどります。
序章「さくらももこができるまで」 ©さくらももこ ©さくらプロダクション
第1章は「ももことちびまる子ちゃん」。『ちびまる子ちゃん』は、1986年に少女まんが誌「りぼん」で連載開始。テレビアニメ、映画、全国紙での4コマ連載など、その世界は大きく広がり、国民的まんがへと成長しました。
小学3年生のまる子のモデルは、さくらももこ自身です。ぐうたらでお調子者だけど優しいまる子が、家族やクラスメートなどゆかいな仲間と過ごします。
第1章「ももことちびまる子ちゃん」 ©さくらももこ ©さくらプロダクション
第2章は「ももこのエッセイ」。高校3年の時に書いた作文が「現代の清少納言」と称されたというエピソードを持つ、さくらももこ。文章を書くことはなぜか苦にならず、その才能は1991年発刊のエッセイ『もものかんづめ』で開花しました。
アニメ「ちびまる子ちゃん」では脚本や作詞を手がけ、『おどるポンポコリン』は日本レコード大賞を受賞。著名アーティストとのコラボも話題になりました。
第2章「ももこのエッセイ」 ©さくらももこ ©さくらプロダクション
第3章は「ももこのまいにち」。さくらももこは1994年に男児を出産。子どもと過ごす時間を大切にしたいという思いは、絵本や絵日記など新しい創作に繋がっていきました。
息子のこと、清水のこと、民芸のことなど、さくらももこが大切にした日常が紹介されています。
第3章「ももこのまいにち」 ©さくらももこ ©さくらプロダクション
第4章は「ももこのナンセンス・ワールド」。『神のちから』と『神のちからっ子新聞』は、さくらももこが「ナンセンス」に本気で取り組んだ作品。
読み手を混乱のるつぼに突き落とすような作品ですが、『ちびまる子ちゃん』や『コジコジ』の根底に流れる、どこか冷めた世界観にも通じます。
第4章「ももこのナンセンス・ワールド」 ©さくらももこ ©さくらプロダクション
第5章は「ももことコジコジ」。1991年、さくらももこの落書きから生まれたコジコジ。1994年にまんが化、1997年にはテレビアニメになりました。
正体不明の宇宙の子、コジコジがメルヘンの国で繰り広げる物語は、シュールでナンセンスですが、何気ない言葉には、しばしばハッとさせられます。
第5章「ももことコジコジ」 ©さくらももこ ©さくらプロダクション
終章は「アトリエより」。さくらももこは、仕事でもプライベートでも、みんなを楽しませたり、面白がらせることが大好きでした。
自宅は、民芸品を並べたリビングや、仲間と歌える地下室・カラオケスナック「ドレミ」などにぎやかでしたが、仕事場は約1畳半ほどと、驚くほど小さなスペースでした。
終章「アトリエより」 右はさくらももこ自身による手彫りの特製ハンコ ©さくらももこ ©さくらプロダクション
“描く”ことと“書く”ことの両面で、独特の作品を生み出したさくらももこ。その世界を振り返ると、改めて特別な存在だったことに気が付きます。
そごう美術館での展覧会の後、静岡、神戸、長崎に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年4月21日 ]