メインビジュアルの迫力に少々ドキドキしながら、あべのハルカス美術館に出かけてみました。「幕末土佐の天才絵師 絵金」展です。
あべのハルカス美術館は16階
夏の高知はよさこい祭りや花火などで町中が賑わいますが、ちょっと異色ともいえる“絵金祭り”はご存知でしょうか?
暗闇に蝋燭と提灯の明かりが揺れ、そこに浮かび上がる絵金さんの芝居絵屏風は、八幡宮や商店街など地元の氏子衆が大切に守り継いできて、多くが高知県や香美市などの指定文化財となっています。今回は土佐の絵師「絵金さん」の代表作をはじめとした作品群約100点が一堂に会する大規模展となり、絵金ワールドを存分に楽しめます。
クリーニング改修したてで一層色彩が美しい芝居絵屏風が並ぶ会場風景
まず、歌舞伎や浄瑠璃の芝居を二つ折りの屏風に描いた芝居絵屏風が並びます。経年による損傷や風化が、この度クリーニングを終えて色彩も蘇りました。「血赤」と呼ばれる絵金の赤が目立ちますが、出血の場面は意外と少なく、緑や黒との組み合わせなど効果的な配色により、インパクトを与えています。
怖いだけでなくユーモラスな表現も。木下蔭狭間合戦 石川五右衛門 二曲一隻屏風、紙本彩色 香南市赤岡町本町二区 前期展示(4/22~5/21)
よく観ると、一画面ではありますが背景の建物や風景に遠近感を与え、人物の配置や導線から時間の流れを感じるように見せています。複数の場面を織り込む「異時同図法」というそうで、ストーリーがわかる構図です。
また、中にはゆるい表情の人物や動物も描かれていてユーモラスな面も多くみられます。これなら恐ろしくありません。 会場は絵金祭りの雰囲気が味わえるような設営で工夫されていました。
夜祭の雰囲気を再現。高知市朝倉 宮の前奥咥内町内会
右)蝶花形名歌島台 小坂部館 左)敵討優曇華亀山 赤堀屋敷 二曲一隻屏風 紙本彩色 芳原下西組
神社の参道をまたぐように山門型の絵馬台(台提灯)が組まれ、屏風絵が表に2枚、裏に2枚飾られています。下絵と比較できる絵馬提灯や、宮大工によってつくられた拝殿風の絵馬台には手長・足長の装飾が施され、鮮やかな色彩の芝居絵屏風が並んでいます。
ちょっと蒸し暑さ残る夏の夜の空気感と、楽しみにしていた子供たちが家族団欒の時間を過ごす風物詩としての雰囲気が、よく伝わりました。
絵馬提灯 釜淵双級巴より 展示風景
手長足長絵馬台と屏風絵 木彫 八王子宮
絵師金蔵は1812年に高知はりまや橋近くに生まれたと知られており、江戸で修業ののち土佐に戻り藩の家老の御用絵師となります。狩野派絵師に学び腕を磨きますが、贋作事件に巻き込まれたのちは(一説による)、町絵師として多くの作品を残しました。弟子や孫弟子などもたくさん育てて「絵金派」と呼ばれる活躍をし「友竹」「雀翁」などの画号を使ったようですが、謎多き人物です。
最後のコーナーでは弟子たちや屏風絵以外の作品もあります。男子の初節句に飾る大きな幟も迫力があります。
金蔵と宮田洞雪による養老の滝図 龍虎図 幟、布に彩色、三点組 土佐藩御用菓子舗 西川屋
河田小龍 義経千本桜 加賀見山旧錦絵 横幟、紙本彩色 高知県立歴史民俗資料館 前期展示(4/22~5/21)
現在芝居絵屏風は約200点が現存するようですが、もともと神社や町内会など、各所で保管されていてまとめて観ることができません。こうした展覧会で絵師・金蔵の活躍を知ると、今度は地元高知で実際に屏風絵巡りをしてみたくなりますね。
ミュージアムグッズも地元企業とのコラボレーション商品が多く、高知にとって絵金さんが今も親しまれていることがわかります。
四国ならではのグッズ登場
あべのハルカスは高さ300mを誇るのっぽビル。その16階に美術館があり、シャトルエレベーターもあります。向かい側の天王寺公園から、ぐいーっと見上げながらのんびり散策も楽しめてお勧めです。
天王寺公園からのあべのハルカス
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2023年4月21日 ]
エリアレポーター募集中!
あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?
→ 詳しくはこちらまで