2年に一度開催される現代美術の国際展、ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展。1895年から120年以上の歴史を重ね、今なお大きな影響力を持っています。
2022年4月から11月にかけて開催された第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館展示に選出されたのは、ダムタイプです。アーティゾン美術館では2回目となる帰国展が、同館で開催中です。
アーティゾン美術館「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap」会場入口
ヴェネチアでは新作インスタレーション《2022》が展示されましたが、展覧会では《2022: remap》として、会場にあわせて日本館の内部を90%の比率で再現。レーザー光線が照射され、北・東・南・西の方角に置かれた高速で回転する鏡に反射し、四方の壁に投影されています。
アーティゾン美術館「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap」展示風景
レーザー光線は超高速で明滅し、テキストを生成。限定された狭いエリアのみで音が聞こえる回転式超指向性スピーカーからの音とともに、さまざまな質問が発せられています。
アーティゾン美術館「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap」展示風景
投げかけられる質問は「地球とは何ですか?」「国はいくつありますか?」など。1850年代のアメリカの地理の教科書から取られたもので、シンプルで普遍的な問いです。
インターネットやソーシャルメディアによって大きく変化した、コミュニケーションの方法や、世界を知覚する方法について、改めて振り返ることを意図しています。
アーティゾン美術館「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap」展示風景
今回のプロジェクトには、故・坂本龍一氏も参加し、作品のために1時間のサウンドを作成。また、それとは別に、坂本氏の呼びかけにより世界各地でフィールドレコーディングされた音も、ターンテーブルから流れています。
ターンテーブルの場所は、東京からの方位に従って配置されています。
アーティゾン美術館「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap」展示風景
日本におけるアート・コレクティブの先駆け的な存在といえるダムタイプ。会場は暗い空間と光の文字、そしてわずかな音だけ。壁面には説明が無いのでちょっと戸惑うかもしれませんが、まずは空間に身を委ねてください。解説が記されたリーフレットは、会場出口で配布されています。
別のフロアでは「アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ」と「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 画家の手紙」も同時開催中です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年2月24日 ]