1960年代から現在にいたるまで、200冊に及ぶ絵本を作ってきた詩人の谷川俊太郎(1931-)。谷川さんが生みだした絵本の世界観を、音や映像、インスタレーションで楽しむことができる展覧会が、PLAY! MUSEUMではじまりました。
会場入口には、幼稚園の頃から車が好きだったという谷川さんが最初に買った車、シトロエン・2CVが展示されています。会場内は展覧会のタイトル通り、まるで“百貨店”のように、バラエティ豊かな絵本や谷川さんの好みを感じられるものに溢れています。
「谷川俊太郎 絵本★百貨展」会場入口
入口の床に描かれているのは『ことばあそびのうた』。羊の爪からできたペルーの民族楽器を鳴らしながら「かっぱ かっぱ らった…」と、身体を動かしながら言葉遊びを体験できるインスタレーションです。
「谷川俊太郎 絵本★百貨展」会場風景
ひらがなが散りばめられたオレンジ色のドームでは、子どもに人気のユーモアな絵本『おならうた』を紹介しています。おならドームの中では作品の原画だけでなく、時折聞こえる“音”にも注目です。
おならドーム
「とんねる」の先に現れる空間の壁側には、長新太さんによる『えをかく』の作品が並んでいます。スピーカーからは谷川さん本人の朗読が流れ、『えをかく』のストーリーとともに天地創造の世界をめぐっていきます。
「谷川俊太郎 絵本★百貨展」会場風景
谷川さんは、イラストレーターの和田誠さんとも数多くの絵本を手掛けています。2人の共作絵本『あな』をイメージして、角材を組み合わせた8メートルものベンチがつくられました。
会話が反復する『穴』のストーリーになぞらえて、反復した構造を取り入れたベンチは、座って絵本を楽しむことができます。
「谷川俊太郎 絵本★百貨展」会場風景
無機質なアルミニウムの壁面には、生と死をテーマとした『かないくん』と『ぼく』が展示されています。
アルミの中の空間には2022年にNHKのドキュメンタリー番組でも取り上げられた『ぼく』を紹介。登場人物の少年がまっすぐにみている視点を表しています。
「谷川俊太郎 絵本★百貨展」会場風景
「谷川俊太郎 絵本★百貨展」会場風景
今回の展覧会のために作られた新作の映像作品では、「すき」をキーワードに、谷川さんの好きなものが50音順に流れます。会場入口で展示されていた「くるま」や「とんねる」も登場し、文字の最後には写真家の田附勝さんが日本各地で撮影した写真も紹介されます。
この作品は、写真絵本『すきのあいうえお』として発行される予定です。
「谷川俊太郎 絵本★百貨展」会場風景
“ことば”の楽しさをイラストや映像、音から発見することできる今回の展覧会。
来場者の方にお土産としてわたされるのは、谷川さんの言葉入りトイレットペーパー。谷川さんが念願だったグッズを持ち帰って、家の中でも展覧会の楽しさを思い出すことができそうです。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2023年4月11日 ]