画面中央の血が垂れているような大きな「毒」の文字と、右側のショッキングピンクの血のりの上の「コノセカイハ、ドクダラケ。」というキャッチーなコピーが目を引くポスターに誘われるように、大阪市立自然史博物館 ネイチャーホールで開催中の「特別展『毒』」を観てきました。
会場入り口で出迎える大きな模型に息を飲む
会場入り口で出迎えてくれるのは、オオスズメバチと大きく口を開けて牙を剥くハブの巨大な模型!毒をもつ生物たちの精巧に作られた巨大模型に、圧倒されます。
会場風景
イラガの幼虫の毒々しさ!イラクサの茎に生える見るからに痛そうな刺毛!見るだけで、むずがゆさ、あるいは激しい痛みを感じてしまいます。実に精巧にできた模型です!
会場風景
拡大模型やアップ画像のインパクト!
毒をもつ生物たちを拡大した模型は、インパクト大!ちなみに、ハブは約30倍、オオスズメバチは約40倍、イラガは約100倍(実際は、2㎝ほどの大きさを2mに拡大!)、セイヨウイラクサは約70倍(実物比)だそうです。
ハブの牙からは、毒が滴っています。そのリアル感!ハブの毒は攻めるための毒で、獲物に毒を注入し、殺すか弱らせて食べます。
会場風景
オオスズメバチの強力な大あごと毒針を見てください。この毒針は何度も刺すことができるそうです。見るからに、刺されたら痛そうです。
会場風景
一方、イラガの幼虫の毒は、自身を守る防御(捕食からのがれるため)のために毒を利用する、守るための毒です。たしかに、この毒々しい色合いを見れば、たいてい、避けることでしょう。
会場風景
これらの模型だけでも、「毒」展を堪能した気になれます。さらに、アップの写真も恐ろし気です。まがまがしさが圧巻です。トビズムカデには嚙まれたくないと強く思います!
会場風景
身近なものに含まれる毒
毒をもつ生物というと、まがまがしい姿や熱帯などの遠く離れた場所など、日常生活とはかけ離れた異界のイメージですが、実は、私達の暮らしの身近にも有毒なものがあふれているそうです。
トリカブトやチョウセンアサガオなどは有毒として有名ですが、普段、当たり前に口にするインゲン豆やジャガイモなども、部位によっては十分危ないとのこと。
会場風景
「日本における過去50年間の種子植物による食中毒」の表は、興味をそそられます。毒々しい展示物の陰で目立ちませんが、必見です。
実際の標本も多数!さすが、自然史博物館!
今回の展示では、精巧な模型も見逃せませんが、実際の標本も多数展示されています。実物のリアルは、さすがです!
タランチュラといえば、ヨーロッパの伝説に登場する毒グモです。いかにもな姿です。
会場風景
生きたクラゲも展示されています。夏にクラゲに刺された思い出がある人もいることでしょう。
会場風景
標本で特筆すべきは、ズグロモリモズです。この鳥は、パプアニューギニア産で、はねや皮膚に毒を持っていますが、えさとしている昆虫に由来する神経毒だそうです。
会場風景
人間が作り出した毒
自然界のさまざまな「毒」に圧倒された展覧会でしたが、「人間が作った毒」のコーナーには、考えさせられました。
近年、とかく話題になっているマイクロプラスチックですが、とても小さなミジンコの体内にも蓄積している展示は、衝撃的ですらあります。
会場風景
マイクロプラスチックのほかにも、分解されにくいために拡散し、生物に蓄積する殺虫剤、PCB、ダイオキシンなども、忘れてはいけない「毒」です。
人類の歴史とともにある毒
人間がはじめて毒を利用したのは、おそらく狩猟だと考えられています。トリカブトから抽出された毒が塗られた矢。どのように毒を知り、毒を利用するに至ったか、興味が尽きないところです。
会場風景
毒々しさをあおる展示
今展覧会のポスターもいかにもな毒々しさが目を引きますが、会場内の壁から滴る血のり!「毒」展らしい工夫です。
会場風景
会場を出たミュージアムショップでは、「毒」の缶バッチやプリクラコーナーなどもあるので、「毒」展を持って帰ることもできます。「毒」展の思い出にどうぞ!
[ 取材・撮影・文:atsuko.s / 2023年3月17日 ]
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