「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」が、国立国際美術館で開かれています。ベルリン国立ベルクグリューン美術館は、ドイツ生まれの画商でコレクターであるハインツ・ベルクグリューンのコレクションを収蔵しています。展覧会では、その中から珠玉の97点(うち76点が日本初公開)に、日本の国立美術館所蔵・寄託作品11点を加えた108点が展示されます。
今回の展覧会は、ベルクグリューン美術館の改修工事を機に、主要作品を館外で一堂に展示する世界初の展覧会となります。
サブタイトルに「ピカソ クレー マティス ジャコメッティ」とつけられているように、ベルクグリューンのコレクションは、その4人の芸術家に、セザンヌを加えた20世紀の巨匠たちの作品に重点が置かれています。展覧会では、それらの主要作品を目の当たりにすることができます。特に、ピカソの作品は圧巻です。
ピカソ 全ての時代を網羅
「青の時代」から「ばら色の時代」、そして、キュビズムの探求、古典主義への傾斜と破壊、両世界大戦と彼を取り巻く女性たちなど、ピカソの変遷を克明にたどることができます。
日本初公開の「座るアルルカン」は、青の時代に比して、明るい色調であるにもかかわらず、見るものに得も言われぬ不確かさを感じさせます。ピカソ24歳の作品です。「青の時代」の「ジャウメ・サバルテスの肖像」が横に並んでいます。
豊満な体の裸婦が足を組んで、自らの足を拭く「座って足を拭く裸婦」は、古代彫刻やルノワールを想起させます。ただ、裸婦の後ろに広がる浜辺と海、特にその海の静けさと色合いが印象深いです。
展覧会の掉尾を飾るにふさわしいピカソの2点は、この展覧会の充実ぶりを如実に示しています。最後の最後まで、ピカソに気圧され続けたのは、この展覧会の醍醐味と言えるでしょう。
会場風景
「展覧会の中のもう一つの展覧会」ともいえる、充実のクレー
ベルクグリューンは、ピカソ、クレー、マティス、ジャコメッティを敬愛し続けていましたが、中でもクレーは終生愛してやまなかったということです。クレーの作品の充実ぶりが、東京での観客に「展覧会の中にもう一つの展覧会があるような」と言わしめています。
クレー 緑の風景
展覧会では、第一次世界大戦の終わりからバウハウス時代にかけての作品が中心に紹介されています。同時代のピカソと比べながら見ることができるのも、この展覧会ならではです。
クレー 子どもの遊び
第二次世界大戦後のピカソ、マティス、ジャコメッティ
展覧会では、マティスの油彩にとどまらず、彫刻、素描、切り紙絵が展示されています。 日本初公開の「雑誌『ヴェルヴ』第4巻13号の表紙図案」の鮮やかな色合いと大胆な切り紙がとても斬新で、マティス晩年の偉大な達成と言われるゆえんです。
鮮烈な赤と切り紙の絶妙な配置が圧倒的なインパクトの「植物的要素」が横に並んでいます。
マティス 切り紙
同じく日本初公開のマティスの「縄跳びをする青い裸婦」とジャコメッティの「広場 Ⅱ」が同じ部屋に並んで展示されています。ベルクグリューン美術館のモントゥア博士が「ベルクグリューン美術館でもこんな風に見ることはできない」とうらやまし気に語られた展示です。必見です。
マティス ジャコメッティ
バレンタインデーやホワイトデーには、ピカソの「緑色のマニキュアをつけたドラ・マール」や「黄色のセーター」にちなんだドレスコードありのイベントも企画されています。詳細は、公式ツイッターで発表されるそうですので、楽しみです。
[ 取材・撮影・文:atsuko.s / 2023年2月1日 ]
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