ジョーズ、ゾンビ、犬神家の一族…。さまざまな作品がつくられてきた映画の世界で、見る人に恐怖を抱かせる映画は記憶に残る作品も多く、観客からも支持を集めてきました。
『カリガリ博士』などの古典から、『ジョーズ』などのパニック映画、そして日本の怪談映画やJホラーの最新作まで、数々の恐怖映画ポスターを紹介する展覧会が、国立映画アーカイブで開催中です。
国立映画アーカイブ「ポスターでみる映画史 Part 4 恐怖映画の世界」会場入口
展覧会は第1章「恐怖映画の古典 怪人・怪物」から。古くは無声映画の時代から始まった恐怖映画の世界。狂気の科学者、異形の怪人などは、トーキー、カラー映画、3Dと、映画技術の発展とともに、さまざまな作品が作られていきました。
この章は一般の来場者も撮影可能。高さが2メートル近い『オペラの怪人』巨大ポスターとのツーショットなど、お楽しみください
第1章「恐怖映画の古典 怪人・怪物」
第2章は「狂気と幻想を求めて サイコホラー、ゴシックホラー」。映画の文化が広がっていくと、描かれる恐怖は見た目や行動など外面的なものだけでなく、人間の心に潜む闇や異常心理など、内面的なものも題材になっていきます。
1950年代後半から70年代にかけては、ドラキュラやフランケンシュタインなど、怪人・怪物映画のリメイクに基づく数々のゴシックホラー作品も作られました。
第2章「狂気と幻想を求めて サイコホラー、ゴシックホラー」
第3章は「未知なるものの襲来 パニック、そしてゾンビ」。1950年代には『遊星よりの物体X』『宇宙戦争』などのSFパニック映画が流行。また『鳥』『ジョーズ』など動物パニック映画にもあるように、得体のしれないものの襲来は、大きな恐怖を呼び起こします。
その究極の存在といえるのが、ジョージ・A・ロメロが生んだゾンビ。「ゾンビに食べられるとゾンビになる」という設定は大きな反響をよび、まさにゾンビのように同種の作品が次々に作られていきました。
第3章「未知なるものの襲来 パニック、そしてゾンビ」
第4章は「より鮮烈に、より残酷に オカルトとスプラッター」。1968年、アメリカ映画界は「一般向け」「成人向け」などのレイティング制度に移行。より鮮烈で残酷な映画もつくられるようになりました。
『エクソシスト』『オーメン』などのオカルト映画は大ブームに。『死霊のはらわた』などの血しぶきが飛び散るスプラッター映画も話題になりました。
第4章「より鮮烈に、より残酷に オカルトとスプラッター」
第5章と第6章は「日本の恐怖映画」。「四谷怪談」「化け猫」「番町皿屋敷」など、日本では映画が生まれる前から怪談が語り継がれており、歌舞伎などで庶民にも親しまれていました。
そのせいか日本で映画が始まると、早くから怪談に基づく映画が作られました。特に『四谷怪談』は数えきれないほど映画化されており、会場には1928年の『四谷怪談』をはじめ、さまざまなポスターが並びます。
第5章「日本の恐怖映画(1)」
恐怖映画としてだけでなく、日本の映画ポスター史に残る名作といえるのが、1976年の『犬神家の一族』。角川春樹事務所の第1回映像作品で、水面から突き出た足の映画ポスターは、見る人に大きな衝撃を与えました。作品は、市川崑監督・石坂浩二主演による金田一耕助シリーズの第1作でもあります。
第6章「日本の恐怖映画(2)」
1998年には『リング』が公開。テレビの中から這い出てくる長い前髪の「貞子」は見る人を恐怖のどん底に陥れ、『呪怨』『着信アリ』などジャパニーズホラーが大ブームになりました。
第6章「日本の恐怖映画(2)」
展覧会は「西部劇の世界」「ミュージカル映画の世界」「SF・怪獣映画の世界」に続く第4弾。今回は恐怖映画の音楽が会場で流されており、『ジョーズ』『オーメン』『トワイライトゾーン 超次元の体験』など18曲を用意。耳でも恐怖の世界を追体験できます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2022年12月12日 ]