池田理代子による大ヒットマンガ『ベルサイユのばら(以下、ベルばら)』。フランス革命を背景にした壮大な歴史ドラマは「少女マンガで歴史ものはあたらない」という当時の常識を覆して大ブームを巻き起こし、宝塚歌劇やTVアニメも大ヒットしました。
1972年の連載開始から、今年でちょうど50年。ベルばらの中でもマリー・アントワネットとオスカルの二人に焦点を当て、不朽の名作の軌跡に迫る展覧会が、東京シティビューで開催中です。
東京シティビュー「誕生50周年記念 ベルサイユのばら展 -ベルばらは永遠に-」会場入口 ©池田理代子プロダクション
1972年4月から1973年12月まで「週刊マーガレット」(現「マーガレット」、集英社)に連載された、ベルばら。当時、池田は若干24歳。高校生の時に読んだ伝記『マリー・アントワネット』に感銘を受け、いつか作品にしたいという思いがかたちになったのが、ベルばらでした。
フランス貴族の華麗な世界が、ベルばらの持ち味。展覧会でも会場冒頭から、ベルばらワールド満開のセットが、来場者をお出迎えします。取材は日中でしたが、夜はさらに映えると思います。
序章「ベルサイユのばら」誕生エリアにある宮殿をイメージしたエントランス展示 ©池田理代子プロダクション
中に進むと、連載当時の貴重な原画が並びます。
池田は連載中も「もっと自分の思い通りに絵を描きたい」と、さらなる高みを目指していました。原画を見ると、物語の進展とともに画の筆致が変化していく様子がよくわかります。
第1章「ベルサイユのばら」 ©池田理代子プロダクション
物語はマリー・アントワネットが無邪気な女性から人間として成長していく骨格に加えて、池田が創作した男装の麗人・オスカルが登場。対照的な二人の女性は、時代の流れに翻弄されながらも、自ら選んだ道を気高く進んでいきます。
物語の結末は悲劇的です。フランス革命に際し民衆側に就いたオスカルは、バスティーユ襲撃に参加して戦死。マリー・アントワネットは民衆の前に晒されながら、断頭台の露と消えました。
第1章「ベルサイユのばら」 ©池田理代子プロダクション
マンガの連載が終了した翌年の1974年8月、宝塚歌劇団による舞台「ベルサイユのばら」が宝塚大劇場で上演。同年11月には東京公演が始まり、空前のブームを引き起こしました。
宝塚によるベルばら初演の演出を手がけたのが、日本映画界を代表する二枚目併優・長谷川一夫だったのは、あまり知られていないかも知れません。
長谷川は宝塚で演出を手掛けた第一作目が評価され、次に手がけたのが「ベルばら」。マンガを原作にする事に対しては賛否の声が上がりましたが、見事、宝塚ならではのベルばらをつくりあげました。
宝塚のベルばらは何度も再演され、2006年1月には通算上演回数1500回を突成。2014年6月には通算観客動員数500万人を記録する大ヒット作となりました。
第2章 宝塚歌劇「ベルサイユのばら」 ©宝塚歌劇団
1979年10月には、TVアニメ「ベルサイユのばら」の放送がスタート。監督はシリーズ前半が「巨人の星」の長浜忠夫、後半が「あしたのジョー」の出﨑統。キャラクターデザインは「聖闘士星矢」を手がけた荒木伸吾と姫野美智が担当するなど、当時のアニメ界を代表するスタッフが集結しました。
ストーリーは原作を踏襲しながらも、主人公たちの性格設定が原作とは異なるなど、独自色も強く、原作や宝塚歌劇とは違ったファン層の掘り起こしに成功。放送終了後も繰り返し再放送されるなど、こちらも長きに渡って支持を集めています。
第3章 TVアニメ「ベルサイユのばら」 ©池田理代子プロダクション・TMS
世代を超えて読み継がれてきたベルばら。アジア、ヨーロッパでも相次いで翻訳・出版され、海を越えてファン層を広げていきました。
2022年には劇場アニメの制作決定も発表。多くの人の注目を集めています。
第4章「ベルサイユのばら」は永遠に ©池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会
ミュージアムショップにはベルばらの華麗なる世界をイメージした様々なグッズがずらり。老舗フランス紅茶ブランドのニナスをはじめ、さまざまなブランドとのコラボグッズも用意されました。
特設ショップ
このコーナーでは40周年記念展もご紹介していますが、その時には幼かったはずの若いファンも、内覧会の会場では目につきました。
今でも新しいファンを獲得し、輝き続けているベルばら。その底力には改めて驚かされました。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2022年9月16日 ]
※大阪·阪急うめだ本店にも巡回。その他地方巡回予定あり。展示の内容は各巡回先によって異なります。