東北の岩手より、「週刊少年ジャンプ」連載「すすめ‼パイレーツ」などで知られる江口寿史が、ポップでキュートな女の子たちを描く「江口寿史イラストレーション展 彼女」が岩手県立美術館で開催されています。
江口先生が県立の美術館でイラストに特化した展覧会を開催するのは初めて。しかも、この会場が過去最大規模での展示。通常より、80点ほど下絵と線画を中心に作品が追加されたそうです。今回は、岩手県立美術館と共に紹介していきます。
東玄関の看板
岩手県立美術館は、盛岡駅西口から歩いて約20分、車で2~3分の盛岡市中央公園内にあります。公園内でも、一際存在感のある綺麗でスタイリッシュな美術館です。岩手県を代表する萬鉄五郎、舟越保武などの作品を中心に展示しています。
公園内より東側から見た岩手県立美術館。館内には、レストランや読書スペースもあります。
会場入り口のバナー。早速、中へ。
会場入り口
展示は6章立てでごとテーマ別で分かれており、第1章のテーマは「遭逢 ポップの美神たち」。まさに会場へ入ると、アメリカンポップアートの色彩豊かな「彼女」たちに遭遇し、目を奪われました。個人的には、青春時代に聞いていた銀杏BOYZのCDジャケットが、1番最初に現れてテンションが上がりました(^0^)
会場風景より 銀杏BOYZ「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」CDジャケット 2005年
下の写真、左の作品は、企画展ポスターやチラシに使用された作品。江口先生自身が「ぼくのイラストの新たなステップの幕開けとなった作品」と位置付けている作品だそうです。
会場風景より 左:Shiggy Jr.「ALL ABOUT POP」(通常版)CDジャケット 2016年 / 右:Shiggy Jr.「ALL ABOUT POP」(初回限定盤)CDジャケット 2016年
季刊「リアルワインガイド」の数ある作品の中でも、代表作の一つ。第4章では、こちらの作品の線画をケース展示しています。しかも、このケース展示は岩手会場特別出品!ファン必見ですね。
会場風景より 「リアルワインガイド」58号表紙 2017年
第2章は「恋慕 マンガからイラストレーションへ 1977年~」。少年誌のギャグマンガから、セリフのない1枚のイラストレーションへ制作の場が広がった頃の作品がずらり。この章だけでも、160点以上の作品が展示されています。
会場風景
1980年代の「彼女」の髪型や服装も楽しめる作品。その時の流行が垣間見えまね。当時、江口先生はイラストレーターが使い始めたカラートーンを、マンガ特有のトーンテクニックも駆使し、独自の画材として磨き上げていきました。
会場風景より 「週刊ビックコミックススピリッツ」連載『パパリンコ物語』 1985~86年
第3章「素顔 美少女のいる風景 1990~2000年」は、実際に、街頭取材した女性の写真をもとに描かれたイラストレーション。
会場風景
吉野家の前、どこにでもありそうな街角の「彼女」を写真に撮り描く。「彼女」たちの個性が生き生きと伝わり、ひとりひとり違う可愛らしさや美しさを見ることができます。
会場風景より 左:「Weekly漫画アクション」表紙「美少女のいる風景」シリーズ〈西荻窪〉1999年 / 右:「Weekly漫画アクション」表紙「美少女のいる風景」シリーズ〈吉野家〉1999年
第4章「艶麗 ワインを持った女たち 2002年~」は、季刊「リアルワインガイド」の創刊号から現在までの70枚以上の表紙の中から選ばれた54点を展示。一点一点、違う個性を放つ彼女たち。
ワインを持ったどの彼女も、とっても可愛くて見入ってしまいます。たくさんいる「彼女」の中から、「推し」を見つけてみてはどうでしょうか。きっと、お気に入りが見つかるはず。
会場風景
作品を見て、自分も描いてもらいたいと思う女性は多いはず。江口先生は「女性の何気ない仕草に、母性も無邪気も優しさも生活も、全てを含んだ色気がフォルムになっている一瞬があるんです。」と語っています。
会場風景
第5章「青春 音楽とファッション 2000年代~」。音楽にはずっと助けられている、恩返しの気持ちで描いていると語る江口先生。
「彼女」たちのファッションは、ちょっとダサくて普段着っぽい感じなのは、江口先生の好みらしい。会場には、等身大パネルや壁貼りの線画などもあって、「彼女」の可愛さがよりわかる展示になってます。
会場風景
会場風景
江口先生のイラストには、たくさんのセクシーな「彼女」も登場します。来場者は、男性の方がやや多いものの、女性の方もたくさん来ているそうです。女性も憧れるセクシーさ、可愛さも魅力の一つ。また、今回の「彼女」展は、過去最大級の作品数。以前に「彼女」展をみた方でも、新しい作品を見ることができるので、十分、楽しめます。
会場風景
第6章「慈愛 いまを生きる彼女たち 2010年~」では、現代の女の子たちのイラストが中心に展示されています。2014年流行語大賞のノミネートされた「カープ女子」や「トラジョ」「野球女子」など、その時の女の子の流行を見逃さない点がさすがです。
会場風景
「彼女」とは、恋人であり、妻であり、娘であり、母親でもある、様々な関係性の女性たちのことで、江口先生は女性への憧れと尊敬の気持ちを込めて、日々「彼女」たちの絵を描き続けているそうです。
会場風景
グランド・ギャラリーのバナーは、岩手県立美術館のために新しく作ったもの。下には、彼女たちのスタンドポップがずらり。お気に入りのスタンドポップを見つけて、一緒に写真を撮って見てくださいね。
会場風景
個人的に好きなスタンドポップ2つ。「推し」です。
「推し」パネル
「推し」パネル
作品©2022 Eguchi HIsashi
[ 取材・撮影・文:convallaria majalis / 2022年7月26日 ]
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