東京、九州(福岡)、京都と国立博物館3館巡回での開催となった、伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」が遂に京都での開催を迎えました。
比叡山延暦寺における開宗から江戸時代に至るまでの日本天台宗の歴史を多くの名宝で辿るもので、3館会場それぞれの特色を生かし、天台の教えや最澄の功績を伝えようと全国各地の寺社等の協力をもって宝物が集結しています。
京都国立博物館 特別展「最澄と天台宗のすべて」会場入口
日本での天台仏教の教えを広めた伝教大師最澄(767-822)は近江国で生まれ13歳で出家、比叡山に籠る修行で天台宗の経典『法華経』の教えに出会い、万人救済の思想に生涯を捧げ、真言宗弘法大師空海と並ぶ名僧として仏教界で大きな役割を果たしました。
最澄は比叡山延暦寺を創建し、更なる研鑚のために中国へ渡りました。帰国後、僧の認定制度などに新たな考えを取り入れた革新的独自性を展開し、その教えは慈覚大師円仁や智証大師円珍を筆頭に多くの弟子たちが継ぎ、日本全国へ流布普及して今日に至っています。京都会場では国宝「聖徳太子及び天台高僧像」より現存最古の肖像画といわれる「最澄像」などが出展され(前期・後期の入替制)、お姿を拝見することができます。
国宝 聖徳太子及び天台高僧像 十幅のうち最澄、円仁 兵庫・一乗寺蔵 展示期間:4月12日(火)~5月1日(日)
最澄たちの中国への足取り
また延暦寺の宝物を納める勅封唐櫃や納入品、全国から様々な宝物や仏像などが時空を超えて集結しています。国宝23件、重要文化財72件を含む合計130件が厳かに迎えてくれます。
勅封唐櫃と細字法華経 いずれも滋賀・延暦寺蔵 (展示期間:《勅封唐櫃》通期展示、《細字法華経》4月12日(火
~5月1日(日)
両界曼荼羅図 2幅 愛媛・等妙寺蔵と重要文化財 浄土曼荼羅刻出龕 広島・耕三寺蔵 (展示期間:どちらも通期展示)
手前:重要文化財 金銅密教法具 埼玉・慈光寺蔵、奥:重要文化財 園城寺境内古図 滋賀・園城寺(三井寺)蔵 (展示期間:いずれも通期展示) 展示風景
私が一番長く足を止めたのが、愛媛等妙寺所蔵の「菩薩遊戯坐像(伝如意輪観音)」です。岩に腰かけ、左脚を立膝にした観音像はきりりとした顔立ちで、衆生の声を広く聴いてくださるような姿は鎌倉期のもの。60年に一度公開される秘仏です。
またこの仏像は九州国立博物館にてCT撮影調査が行われていて、頸部に木製八角五輪塔が納められていたことが発見されました。科学の力で解明される数々の謎も今後の調査が期待されます。
菩薩遊戯坐像(伝如意輪観音)愛媛・等妙寺蔵 (通期展示) 展示風景
九州国立博物館による等妙寺秘仏CT調査で発見された内部の五輪塔(3次元データをもとに3Dプリンターで製作)と説明書き
比叡山のお膝元である京都会場は、天台宗の寺院、名僧、宝物をより身近に感じることができる展示内容になっています。最澄が開いた延暦寺は信仰だけでなくその儀式や祭礼は日本の文化に影響を残しています。
延暦寺根本中堂の内陣を体感できる一部再現や、比叡山鎮守の日吉山王社への信仰など京都周辺や北陸、四国などの寺院から集まった宝物を拝見できることで今後の研究や文化継承へと貢献されてゆくことが期待できます。「不滅の法灯」を受け継ぎ守る教えを力強く感じる展覧会です。
重要文化財 日吉山王金銅装神輿(樹下宮)7基のうち1基 滋賀・日吉大社蔵 (通期展示) 展示風景
「京都国立博物館」は鴨川の流れ近き山手にあり、京都を代表する文化発信基地です。赤レンガの明治古都館や、随時展覧会が開催される平成知新館、そして花咲く庭園や茶室などもあり、のんびり散策をお勧めします。ロダンの彫刻「考える人」像から一直線の京都タワー遠望もなかなかのシャッターポイントです。
ミュージアムショップやレストランも充実し、周辺には三十三間堂、妙法院、養源院、智積院など古刹門跡が集まっていて、何度訪れてもルートを変えながら楽しめる界隈です。今日のルートは京都国立博物館から五条方面へ少し歩き、市川屋珈琲でランチにしました。築200年の町家にはロースターを備え、珈琲の薫り漂うシックな店内です。いつもかなり混んでいるのですが運がよかった!
特別展ならではのグッズも豊富
市川屋珈琲にて 近隣には河井寬次郎記念館があります
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2022年4月11日 ]
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