会場入口
19世紀末から20世紀初頭のフランスで活躍した画家、アンリ・ル・シダネルとアンリ・マルタンに焦点を当てた日本初の展覧会がSOMPO美術館で開催されています。それぞれの画風を確立しながらも、互いに影響を受け合い、生涯深い友情を築いたシダネルとマルタン。穏やかで神秘的な光の表現に魅了されながら、二人の足跡を辿ることができます。
時代を映す女性像
ヨーロッパで象徴主義が流行した19世紀末頃、シダネルとマルタンもその影響を受けていました。しかし、二人の関心の矛先は異なっていたため、表現や雰囲気にはそれぞれの個性が見られます。
会場風景
習作
シダネルとマルタンは、19世紀の風景画家たちに倣い、各地へ旅をしながらその風景を描いていました。旅した地域や旅の回数はちがうものの、二人とも習作の旅の中で、それぞれに新たな気づきや関心を得ていきます。
会場風景
四階の展示室へ移動すると、マルタンによる習作が出迎えてくれます。 これらの習作は壁画装飾のために描かれたもので、当時マルタンはシダネルが着手していなかった公共施設の壁画装飾の分野においても成功を収めていました。 習作とはいえ、どの作品も完成品に引けを取らない描写力の素晴らしい作品で、マルタンの大装飾画制作への並々ならぬ熱意が伺えます。
画風の確立-ジェルブロワとマルケロル-
1901年に小さな田舎町ジェルブロワに自宅を購入し、バラの咲く庭や自宅、村を被写体として好んで描いていたシダネル。 ジェルブロワに家を購入して以降、シダネルの絵からは人物の描写が減り、代りに食卓や部屋の明かりの描写によって人々の存在を感じさせる表現を確立させていきました。
《ジェルブロワ、テラスの食卓》も、その表現を用いた作品の一つ。 温かさを感じさせる光に照らされていく村を見下ろす、ひんやりとした色合いの食卓。一体どんな人の食卓なのか、想像力が掻き立てられます。 この作品は、一般の方でも撮影が可能です。
《ジェルブロワ、テラスの食卓》(1930)
また、ジェルブロワのシダネル邸にあるバラ園の中の離れ家の写真や、シダネルとマルタンがシダネル邸のバラ園を散歩している映像も見ることができます。
ジェルブロワのシダネル邸内にある薔薇園の中の離れ家
ジェルブロワにあるシダネル邸の薔薇園を散歩するシダネルとマルタン
シダネルにとってのジェルブロワのような場所を、マルタンも同様に見出します。それが1900年に南仏のラパスティ・ド・デュ・ヴェールに購入した別荘、マルケロルです。
マルタン自ら造りあげたマルケロルの庭は、彼の作品の主要な被写体や着想源となり、マルタンの作風の確立に欠かせない場所でした。マルケロル購入後、それまで象徴性による表現が多く見られていたシダネルの作品には、次第に親しみを感じやすい題材が取り上げられるようになっていきます。
ゴッホの「ひまわり」などを通じた人道支援
SOMPO美術館の企画展は、最後に「ひまわり」(ゴッホ)の鑑賞ができることも大きな楽しみです。 「ひまわり」は平和のシンボル。現在、SOMPOグループによる人道支援活動が行われており、本企画展の紹介動画の視聴も寄付につながります。
[ 取材・撮影・文:Yulica / 2022年3月25日 ]
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