森村泰昌《ワタシの迷宮劇場 M081》2008年 ©Yasumasa Morimura
京都市京セラ美術館新館東山キューブで、同館開館1周年記念展「森村泰昌:ワタシの迷宮劇場」が開催されています。
日本を代表する現代美術家の一人、森村泰昌の大規模展覧会は、京都では、1998年の「『空装美術館』絵画になった私」以来ですので、森村泰昌ファンならずとも楽しみな展覧会です。
展覧会は、渦巻き状の迷路のような空間と3つの部屋からなる4つのセクションで構成されていて、それぞれが微妙に絡み合い、まさに迷宮のようになっています。
M式 写真回廊
ここでは、1985年から撮影され、彼の制作の原点となった約800枚を超えるインスタント写真が展示されています。その質、量に圧倒されます。 名画の中の人物になった作品は、名画の中の人物でありながら、森村泰昌氏そのものです。
森村泰昌《ワタシの迷宮劇場 M285》2007年頃 ©Yasumasa Morimura
森村泰昌《ワタシの迷宮劇場 M073》2013年 ©Yasumasa Morimura
森村泰昌《ワタシの迷宮劇場 M274》1988年 ©Yasumasa Morimura
森村泰昌《ワタシの迷宮劇場 M275》1988年 ©Yasumasa Morimura
歴史上の政治家などの人物にふんすることを通して「ワタシとは何か」「一人のワタシの中のたくさんの秘められたワタシ」を問いかけます。
森村泰昌《ワタシの迷宮劇場 M131》2007年 ©Yasumasa Morimura
森村泰昌《ワタシの迷宮劇場 M132》2009年頃 2枚組 ©Yasumasa Morimura
撮りためてきた写真の中には、作品とは別に、実験的なポーズをとった写真などもあり、作者自身も知らなかった側面に触れることができるのは、今展覧会の醍醐味です。
森村泰昌《ワタシの迷宮劇場 M177》1996年 ©Yasumasa Morimura
夢と記憶の広場
森村作品の最新作と言える動画映像の作品で、二つの向かい合わせになったスクリーンの中で、一人の作者が演じる30人の人物は、今までの作品の中で誰かが来ていた服を着ています。
『京都市京セラ美術館開館1周年記念展 森村泰昌:ワタシの迷宮劇場』展示風景
衣装の隠れ家
森村作品の成立に深くかかわった衣装や書籍を垣間見ることができるのが衣装の隠れ家です。スリットから覗き見ることができます。書物は、作者の記憶を象徴するものだとのことです。
『京都市京セラ美術館開館1周年記念展 森村泰昌:ワタシの迷宮劇場』展示風景
『京都市京セラ美術館開館1周年記念展 森村泰昌:ワタシの迷宮劇場』展示風景
声の劇場
森村氏の短編小説を作者自身が朗読する約25分間のサウンドインスタレーションで、4畳半の畳を中心に、作者の声、チェロ、光、お香の香りに包まれます。真っ暗闇の中で、さまざまな感覚が覚醒させられます。
声の劇場は、各回完全入れ替え制で、入館時に入場時間の整理券をもらい、集合時間に集合場所に集まります。
会場には、5つの門があり、どこから入って、どのように会場をまわっても自由。門には、布がたらされ、まるで鏡の中に入っていくような感じです。
『京都市京セラ美術館開館1周年記念展 森村泰昌:ワタシの迷宮劇場』展示風景
会場内は、美術館のソリッドな壁と対極にある湾曲したゆらぐカーテン=布で仕切られ、 動線が示されていません。そんな空間を街歩きをする感覚で、展覧会場をさまい、さまよって迷子になることを楽しむ、まさに、「ワタシという名のラビリンス」を体験できます。
『京都市京セラ美術館開館1周年記念展 森村泰昌:ワタシの迷宮劇場』展示風景
[ 取材・撮影・文:atsuko.s / 2022年3月12日 ]
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