次代の写実絵画を担う画家として、注目を集めている山本大貴(1982-)さん。
学生時代の作品から最新作まで代表作約40点を展示する大規模展が、千葉県立美術館で開催中です。
会場の千葉県立美術館
美術館での個展は初めての山本さん。会場冒頭の自画像は、ふなばし美術予備校浪人時代の作品です。
手前に置かれた静物は、写実で知られる野田弘志さんの作品からの引用で、今日の作風への源流が見て取れます。
山本大貴《自画像》(習作)2002年 作家蔵
武蔵野美術大学で油彩の古典技法を学び、在学中に初出品した第83回白日会展でいきなり白日賞を受賞。華々しくデビューしました。
《静寂の声》は白日会展で富田賞を受賞した作品で、フェルメール《ギターを弾く女》からの着想です。《A☆I☆W☆S》は、山本さんの武蔵野美術大学大学院の修了制作のひとつです。
山本大貴《静寂の声》2010年 ホキ美術館蔵 / 山本大貴《A☆I☆W☆S》2008年 作家蔵
ノスタルジーを感じさせる作品群は、山本さんが得意とするテーマです。
制作にはカメラも利用し、丹念に描写された室内はやわらかい光に包まれています。
(左から)山本大貴《ふたり》2018年 個人蔵 / 山本大貴《ノエマの森にて》2019年 個人蔵 / 山本大貴《孤愁の窓辺》2021年 個人蔵
モデルが着る衣装は、生地選びから行い、デザイナーに依頼して一からつくる、というこだわりぶり。
会場にはその衣装も展示されています。
ドレス デザイン:河津明美
本展のメインビジュアルにもなっているのが、精巧なメカニックの造形を身につける女性像。
メカニックは造形作家の池内啓人さんによるもので、山本さんはインターネットでその作品に出会い、すぐにスタジオを訪問。私的にも親交を深め、コラボレーションを進めています。
(左から)山本大貴《Standing Figure(feat. IKEUCHI Hiroto)》2020年 個人蔵 / 山本大貴《BLACKBERRY OS(feat. IKEUCHI Hiroto)》2019年 個人蔵
山本大貴《the Third Kind(feat. IKEUCHI Hiroto)》2017年 個人蔵
山本大貴《PUBL1C DEFENS!VE WAR(feat. IKEUCHI Hiroto✕近藤りこ)》2019年 個人蔵
《2.5-DIMENSIONAL GIRL(feat. BLUE EGG)》は、日本画家の池永康晟との「対決」展として企画された作品。
あまつまりな(あまつ様)をモデルに、秋葉原のメイドカフェ「BLUE EGG」のメイド服に身を包んだ、2.5次元アイドルのあまつ様を描きました。
敬意を込めて、画中画として池永作品も描かれています。
山本大貴《2.5-DIMENSIONAL GIRL(feat. BLUE EGG)》2020年 個人蔵
近年はバレエダンサーの作品も制作しています。
《the Lilac Fairy》は、チャイコフスキー『眠れる森の美女』に登場する、妖精・リラの精。モデルは、牧阿佐美バレエ団のダンサーで、千葉県出身の光永百花さんです。
(左から)山本大貴《KANAYA》(from “Á Bientôt”)ダンサー:青山季可 2020年 個人藏 / 山本大貴《the Lilac Fairy》(from “Sleeping Beauty”)ダンサー:光永百花 2020年 個人藏
会場は撮影も可能。極めてクオリティの高い作品とともに、幅広い世代の人が楽しそうに鑑賞している姿も印象的でした。
[ 取材・撮影・文:M.F. / 2022年2月5日 ]
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