ドイツの詩人・作家のエーリヒ・ケストナー(1899-1974)による名作絵本『動物会議』。戦争を止めようとしない愚かな人間を痛烈に批判する物語で、1949年の出版から半世紀以上過ぎたいまでも、世代を越えて読み継がれています。
その『動物会議』をテーマに、8人のアーティストが集結。それぞれの作品で物語をつないでいく、ユニークな展覧会が、PLAY! MUSEUMで開催中です。
PLAY! MUSEUM「どうぶつかいぎ展」会場入口
会場に入ると、早速アーティストの作品が登場します。ケストナーの物語を8つの場面に分けて、8人それぞれが再解釈を加えて絵や立体、映像で作品を作りました。
第1幕「まったく、人間どもったら!」は、梅津恭子(ぬいぐるみ作家)。ゾウ、ライオン、キリンがコーヒーを飲みながら円卓を囲んでいます。人間がいつまでも戦争をやめないので、怒っているのです。
第1幕「まったく、人間どもったら!」梅津恭子(ぬいぐるみ作家)
第2幕「動物ビルで会議があるぞ!」は、秦直也(イラストレーター)。すべての動物が集まって、4週間後に会議をすることになりました。
動物をモチーフにしたイラストを得意とする秦さん。細やかなタッチで描かれたさまざまな動物が壁に並びます。
第2幕「動物ビルで会議があるぞ!」秦直也(イラストレーター)
第3幕「世界をきちんとしてみせるよ!」は、村田朋泰(アニメーション作家)。世界各地から出発した動物たち。陸を、海を、空を、たくさんの動物が移動します。
村田さんの作品は、コマ撮りのアニメーション映像と、氷山に乗って海面を移動する、絵本の一場面を再現した大型装置。アニメーション作品はVRゴーグルを使って楽しむこともできます。
第3幕「世界をきちんとしてみせるよ!」村田朋泰(アニメーション作家)
第4幕「世界一へんてこな動物ビル」は、植田楽(造形作家)。動物会議が開かれるのは、黄色い動物ビル。めずらしい動物が次々に到着し、人間たちは驚きます。
ビルの中には動物がいっぱい。植田さんは、おもに紙とセロハンテープを使って制作しています。
第4幕「世界一へんてこな動物ビル」植田楽(造形作家)
円形のゾーンに進んで、第5幕「子どもたちのために!」は菱川勢一(映像作家)。床や空中に毛皮を纏った丸い物体があり、動いたり音がしたりと、騒々しい雰囲気。薄暗く、ちょっと不気味な空間です。
動物ビルの大会議場で、最初で最後の動物会議。動物たちの鳴き声があちこちから飛び交い、議場はどんどん盛り上がっていきます。
第5幕「子どもたちのために!」菱川勢一(映像作家)
第6幕「連中もなかなかやるもんだ」は、鴻池朋子(現代美術家)。動物たちは二度と戦争がおきないことを要求しますが、人間たちは拒否。ただ、子どもたちのためにも、あきらめるわけにはいきません。
さまざまなメディアで作品を発表している鴻池さん。ここでも、動物の皮革を支持体にして動物を描いたり、影絵を使ったりしています。
第6幕「連中もなかなかやるもんだ」鴻池朋子(現代美術家)
第7幕「人類がふるえあがった日」は、junaida(画家)。一夜明けると、地上から子どもたちが消えてしまいます。動物たちの最後の手段に驚いた人間は、ついに永久平和を約束しました。もちろん、子どもたちは無事です。
junaidaさんは画家として作品を発表する一方、絵本作家としても活躍。「NO WAR」「FOR PEACE」など、動物と大人たちがとりかわした5つの約束が記された5種の作品が並びます。
第7幕「人類がふるえあがった日」junaida(画家)。
そしてエピローグの「動物会議はつづく」は、ヨシタケシンスケ(絵本作家)。絵本のデビュー作『りんごかもしれない』が大反響をよび、今春から巡回展も開催される人気絵本作家です。
ヨシタケさんは、絵本『動物会議』の話を書いたエーリヒ・ケストナーと、絵を描いたヴァルター・トリアー(1890-1951)について紹介。
ふたりとも第二次世界大戦では苦労をし、その経験も踏まえて『動物会議』は生まれました。
エピローグ「動物会議はつづく」ヨシタケシンスケ(絵本作家)
ミュージアムショップでは、ヴァルター・トリアーの絵をあしらったグッズのほか、展覧会参加作家のグッズも多数用意。
梅津さんによるシロクマのぬいぐるみや、展覧会で展示されている植田楽さんの作品、秦直也さんの作品の複製画なども販売されます。
ミュージアムショップ
展覧会に関連して、施設3階のPLAY! PARKでは会議も開催されます。
PLAY! PARKをもっと楽しい場所にするために、遊びのための会議を開く、という楽しそうな企画。詳しくは公式サイトでご確認ください。