独自の文化と歴史をもつ琉球王国。その卓越した技術でつくられた模造復元品を紹介する展覧会が、東京国立博物館 平成館の企画展示室で開催中です。
展覧会タイトルの「手わざ」とは、作品を製作する仕事の高度な技術のことを指しています。会場には、絵画や石彫、漆芸や染織など琉球ならではの作品が展示されています。
東京国立博物館 平成館企画展示室 入口
最初に紹介するのは、琉球の世継ぎの王子家である世子家・中城御殿に伝わった玉御冠(たまんちゃーぷい)。沖縄戦により消失しましたが、那覇市歴史博物館が所蔵する玉御冠を参考に模造復元されました。
採寸記録をもとに作られた木枠に、和紙や花形を貼り付け琥珀や水晶などの飾り玉を留めていく工程もパネルで紹介させています。 ※「玉御冠」の展示は終了しています。
(手前)《玉御冠》 令和元年度 (原資料:18~19世紀) 沖縄県立博物館・美術館蔵 ※展示は終了しました。
続いては、全長7メートルを超える大作の花鳥図。春から冬にかけての移り変わりにそって、色とりどりの鳥や植物が描かれています。こちらも沖縄戦で失われたとされていましたが、近年新たに発見された中国福建の画家・孫億筆による作品と同一のものと判明されます。
鉛白や群青などを用いて絹の裏面から彩色する「裏彩色」を施した後、濃淡をつけながら「表色彩」を行い、中国絵画技法の精緻な表現が復元されています。
会場風景 (手前)《四季翎毛花卉図巻》 令和元年度(原資料:康煕51年(1712)) 沖縄県立博物館・美術館蔵 ※会期中、巻替えがあります。
会場で一際煌びやかな作品は、三御飾と足付盆です。上に乗った三御飾は、酒器や御玉貫、食籠を用いた飾りの総称のことを指し、王家の正月祭祀などに使用されました。王族が儀式の際に飾り台として使用した足付盆には、鍔の裏から高台にかけて唐草が彫刻されています。
(上から)三御飾(美御前御揃)御酒器(金盃・銀製流台・托付銀鋺・八角銀鋺) 平成28~30年度 (原資料:琉球王国時代(第二尚氏時代) / 朱漆巴紋牡丹沈金透彫足付盆 令和2年度 (原資料:16世紀) 沖縄県立博物館・美術館蔵
琉球王国時代、交易をしていた国々から様々な染織品や色材が入ってきました。沖縄の染織は、それらを模倣して発展、税の代わりに収められた布は薩摩を経由して江戸や京にも伝わります。会場の奥に足を進めると、素材や技法が豊富なの染織作品が並んでいます。
会場風景 ※現在は別の作品を展示しています。
沖縄の染織と言えば、鮮やかな色彩が特徴の紅型。菖蒲や燕、蝶など大和的な意匠が施されているのも特徴です。
模造復元の工程では、米糊を置いた型紙に可能な限り当時の材料を使って布の表と裏から染める両面染が行われています。
会場風景 (手前)《白地流水菖蒲蝶燕文様紅型苧麻衣裳》 令和元年度 (原資料:18~19世紀) 沖縄県立博物館・美術館蔵 ※展示は終了しました。
手わざに関わる人々の試行錯誤の末に完成した模造復元品からは、これまで触れる機会の多くなかった琉球王国の独自の文化に触れることができます。
また、2022年は沖縄県の復帰50年にもあたる年です。5月3日から開催される東京国立博物館「特別展 琉球」も注目です。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2022年1月13日 ]