森と湖の国フィンランドは“世界一幸せな国”と言われ、サンタ、オーロラ、白夜などがイメージされます。またデザインの国としても知られており、マリメッコやイッタラなどは身近なメーカーです。
そして今回は創業200年を迎えるフィンランド最古のテキスタイルブランド『フィンレイソン』の日本初の展覧会をご紹介します。
フィンレイソン展は4Fと3Fで開催
1820年、スコットランド人のジェームズ・フィンレイソンがタンペレに紡績工場を操業し、その後フォルッサにプリント工場やデザインスタジオをつくり発展、フィンランドの暮らしに溶け込んでいるテキスタイルです。
この会社が偉大なのは、フィンランド独立(1917年)より前から社会の変革に貢献してきたことです。タンペレの人口半分もの人を雇い、女性に労働の場を提供し、社会進出や意見を主張する場をつくりました。エリア内に学校や病院、教会をつくりコミュニティを育てる中、独自の貨幣を流通させるなど制限のあったロシア支配下でも家庭生活を守る企業でありました。
今回、タンペレ・フォルッサ両博物館の所蔵から約250点もの資料が来日していますが、フィンランドにとって国家の根幹をなす文化のあかしといえるものかもしれません。
ジェームズ・フィンレイソン
色見本や見本帳
会場内には北欧スタイルのシンプルデザインが並ぶ
フィンレイソン製品の特徴は、自然からもらったデザインをバランスよい色彩でまとめ上げ、衣類生地やファブリック、エプロン、タオルなど家庭に浸透したテキスタイルをモットーにしていること。
見本帳をつくり、販売努力と成果を求めたうえ、アトリエを設立することでデザイナーとパターンがセットとなり大切に繋がれてきたことが展示作品からわかります。
1950年代の人気柄はペイズリー柄
当時のファッション誌広告やポスターで販売し広告にも注力
フィンランドの自然から選ばれたパターンは植物や動物など身近なものを中心としているので身に着ける人達には違和感なく取り入れられたのでしょう。デッサンに様々な色彩パターンをはめ込み、シンプルに時にポップに、時にユーモラスに図案化されています。
人々は自分の好みのデザイン・デザイナーを見つけ、それらを身に着けて家庭の特徴とするなど家族ぐるみで親しんでいたようです。
「ヘルッタ」の原画と生地 1957年の元デザインを配色を変えて2012年秋向けとして復活 アイニ・ヴァーリ作 2011年・FIN
「ミリオンズオブハート」の別名をもつ人気を博したハートのモチーフ原画 アリヤ・マッティラ作 グァッシュ 1973年FO
デザイン画と完成品への試行錯誤 「エレファンティ」スケッチや生地
フィンランドの野の花がモチーフ どこか懐かしい ウッラ・ペルホ作 グァッシュ 1973年・FO
そして北欧を代表する「ムーミン」たちも発展に一役かっています。森の妖精たちの生活は北欧の生活を代弁し、季節の行事や自然との対話など物語は日常とリンクしています。
1950年代、ムーミンの原作者トーベ・ヤンソンがテキスタイルデザイン画を初めて描き、1980年に正式契約後、ムーミン模様の生地を制作する許諾を得た企業です。展覧会でもムーミンコーナーがあり、ファンには垂涎です。
現在、フィンレイソンの企業としての社会功績は、また次の段階へステップしており、SDGs達成度世界ランキング一位がフィンランドであることの一旦を担っているようです。
私はふと『美しい 暮らしの手帖』という家庭雑誌を思い出しました。昭和23年に第一号を発行した当時の“新しい婦人雑誌”です。洋服や小物を自分で作ろう!働く女性に暮らしの工夫を提案する雑誌です。心地よい暮らしには手作りの温かさが必要かもしれません。そんな時、フィンレイソンの生地が手元にあればごそごそと作ってみたくなるかもしれません。
デジタルで着せ替えを見せるおもしろい展示
どれも欲しくなるデザイン
1970年代のデザイナーはポップなタイプも多い
多くのグッズが並ぶ
会場となった京都文化博物館はレトロ建築が多く残る三条通りに面します。赤レンガの別館は辰野金吾とその弟子によるり設計された旧日本銀行京都支店で、内部は当時の銀行仕様がよく残されています。中庭には当時の金庫蔵も残り、音楽会など催事にも活用盛んです。
京都文化博物館では、京都の歴史や祭りを常に紹介する2階総合展示室もお楽しみいただけます。
赤レンガがトレードマークの辰野金吾式建築
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2021年10月8日 ]
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